2026年3月2日月曜日

映画「アイヒマンの後継者」とミルグラム実験

Milgram experiment 

昨日、映画「関心領域」について書いた。アウシュビッツ強制収容所所長の ルドルフ・ヘス が良心のかしゃくなど何も感じることなく、淡々とユダヤ人の焼却をやっていたことを描いていた、

ヘスと同じくアイヒマンもナチス幹部で、ホロコーストの最高責任者の一人だった。戦後の戦犯裁判で死刑になるが、裁判の過程で明らかになったのが、アイヒマンは、殺人鬼のような異常な人間ではなく、どこにでもいる普通の人間だったということだった。

ミルグラム博士というアメリカの心理学者が 1961 年に、アイヒマンのような普通の人間が残虐になれる心理を解明するために、「ミルグラム実験」という実験を行なった。映画「アイヒマンの後継者」は、その実験をドキュメンタリータッチで再現したドラマだ。

その実験とはこういうものだった。まず一般の人から「学習における罰の効果」を調べるという実験に協力する人を募る。応募した人に学校の教師役をやってもらう。教師役は、生徒役の被験者に対して問題を出して生徒役が答えを間違うと罰を与える役だ。生徒役の体には電極がつけられていて、教師役は高圧電流を流して電気ショックを与える。間違えるたびに電圧をどんどん上げていく。教師役は隣室にいて生徒役の姿は見えないが、電流を流すたびに「ギャー」とか「やめてくれー」といった叫び声が聞こえる。


・・・ところがこれは大ウソで、隣の部屋にいるのはサクラで、演技で叫び声をあげているだけだった。そして、教師役にあらかじめ説明していた、「学習における罰の効果」を調べる実験というのも大ウソで、実は教師役の方が被験者だったのだ。自分の行為が人に苦痛を与えているときに、人はどういう反応をするかを調べる実験だった。

教師役は叫び声を聞くと不安になり、電流を流すのをためらう。なかにはこんな仕事はもう辞めるいう人もいる。しかしこの実験は学術的に重要なもので、あなたの協力が大切だから続けてほしいと説得される。そうやってこの仕事に対する使命感を植え付ける。結果として 65 %の教師役が仕事を続け、最大 450 v まで電圧を上げ続けたという。 

この実験は、普通の人でも、使命感を持たされれば、残虐行為をできてしまうということの証明になった。それは我々は誰でも残虐行為をする「アイヒマンの後継者」になれるのだという警告だった。


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