2015年1月28日水曜日

ティム•バートンの新作「ビッグ•アイズ」(続き)


映画「ビッグ • アイズ」は、大きい目の少女を描いた画家、マーガレット • キーンの物語ですが、ティム • バートン自身も、いろいろな映画の中に目の大きいキャラクターを登場させています。ちょっと怖いような、でも可愛い、といった( ”コワカワイイと言うそうです)独特の個性的なキャラクターですが、「ビッグ • アイズ」の少女の哀しげな顔に通じるものがあります。(左:「フランケン • ウィニー」、右:「コープス • ブライド」)

さきの「ティム • バートンの世界展」で、キャラクターを作る際に彼が描いたイメージスケッチがたくさん展示されていましたが、その中にも、大きい目が多数ありました。美大で学んだだけあって、デッサン力が確かです。

ティム•バートンの新作「ビッグ•アイズ」


いつものファンタジックなティム • バートンとは違うが、面白い映画です。1960年代、大きな瞳の女の子を描いた「ビッグ • アイズ」シリーズで一大ブームを起こした画家キーンの実話をもとにした映画。一躍有名人になり大金持ちになるのだが、実際に絵を描いていたのは妻のマーガレットだった。秘密が漏れないように、アトリエに閉じ込められて絵を描かされるのだが、やがて彼女は一大決心をする..........

 

この映画の時代の ‘60年代、アンディ • ウォーホルに代表される「ポップ • アート」が大流行します。絵画が、ありがたい芸術というより、広告やコミックなどと並ぶ大衆文化の一部になったのです。「ビッグ • アイズ」もそういう絵です。それとともに、絵画が雑誌や TVなどのマスメディアに乗って大量生産 • 大量消費される「商品」になります。映画でも、夫のキーンが大もうけするのは、絵ではなくて、絵を印刷したポスターやポストカードを大量に売ったからでした。

「ビッグ • アイズ」のファンであり、自分でも目の大きいキャラクターをたくさん生み出しているティム • バートンは、主人公マーガレットとその絵を愛情込めて描いています。

2015年1月22日木曜日

「ナショナル • ギャラリー 英国の至宝」


現在公開中の、ロンドンの名門美術館の裏側を生々しく見せるドキュメンタリー映画です。美術館とはどういうものなのか、知っているようで知らなかったことばかりで、ひき込まれてしまい、3時間という長さがあっという間でした。


美術館で働く様々な分野の専門家たちの仕事が紹介されていますが、ひとつだけ例をあげると、絵画修復の専門家のインタビューが印象的でした。修復といえば、汚れや傷を直して、もとの状態にもどす仕事、というイメージしかなかったのですが、実際はそんな単純なものではないことが分かります。どう修復するべきか、それは元がどういう絵だったかについての解釈の仕方によって違ってくるのです。古い絵は、過去にも修復を受けてきたが、今の眼で見ると間違った解釈で修復されている場合が多いそうです。今、自分がやっている修復も、現代の解釈をもとに行っているのであって、それはこれからも永久に正しいとは限らない。だから、修復に使う薬品や絵の具は固定せず、あとで簡単に洗い落とせるようにしておくのだそうです。

学芸員が来館者に「単に名画として(ありがたがって)見るのではなく、絵とあなたとの関係性を見つけてほしい」と訴えています。絵の価値は絶対不変ではなく、時代とともに、見る人とともに、変化していくものである、という考え方がこの美術館の基本にあるようです。修復専門家の話も、そのひとつの現れだろうと思います。

2015年1月20日火曜日

映画の中の自動車 (1)          「いつも二人で」のMG


「いつも二人で」
   1967年、イギリス、監督:スタンリー • ドーネン、主演:オードリー • ヘップバーン

オードリー • ヘップバーン主演のロマンチック • コメディで、監督の腕が冴えるおしゃれな作品。恋人同士から新婚時代を経て、倦怠期にいたるまでの夫婦の絆を12年間の時間軸のなかで描いているが、その間、建築家である夫が出世するにつれて、乗る車がレベルアップしていくようすが面白く描かれています。映画の大部分が車を運転しているシーンで、車が主役級の役割をしています。


若い頃の主人公が旅をしながらヒッチハイクでいろいろな車に乗る。トラクターの荷台や VWのマイクロバス、アメ車のステーションワゴンなどがコミカルに描かれています。


新婚になった二人が買った中古のオンボロ MG で走るシーンがこの映画の中心ですが、とてもいい。ドライブしながら口喧嘩ばかりなのだが、自由気ままに生きる生活に、開放感あふれる MG はぴったりの車です。

夫の仕事が順調になるにつれて、車は中古車を卒業し、トライアンフになり、最終的にベンツ 230 SLになります。相変わらず口喧嘩ばかりなのですが、結局、お互いに好きで分かれることができません。

映画の原題は「Two for the Road」ですが、明らかにこれは、「車で道を共に走る二人」という意味と「人生という道を共に進む二人」という意味を重ねたものだと思います。単に便利な道具というだけでない、人にとっての自動車の意味への思いがを込められていると思います。登場する MG 1940年代の 「MG TD」 というクラシックなモデルですが、後の’60年代には「MGB」に受け継がれます。走る楽しさに徹した軽量オープン2シーターで、年配の方にはおなじみだったと思います。さらに後年、これとぴったり同じコンセプトを復活させたマツダ • ロードスターが大成功をおさめますが、買った人のかなり多く(自分もその一人ですが)は、かつて「MGB」 にあこがれた人たちだったのではないでしょうか。