2015年8月25日火曜日

雑誌「美術の窓」に作品が掲載されました


「美術の窓」という雑誌の最新9月号に小生の「現代パステル協会展」出品の作品「廃炉幻想」が紹介されました。作者の意図をけっこう細かく説明していますが、本人が取材を受けたわけでなく、記者の解釈で書かれたものです。でも、ほとんど間違っていません。


同号はパステル画特集で、制作デモも載っています。下は自分も参加している「現代パステル協会」のメンバーの制作プロセス(一部)です。モノクロでトーンバリューを決めてから色を乗せていく、とてもオーソドックスな描き方です。色に惑わされて明暗の諧調がずれてしまわないようにするための重要なステップです。



2015年8月24日月曜日

閑人の ☆☆☆☆☆ 映画           「図書館」が舞台の映画

映画もろもろのコーナーです。今回は「図書館」が重要な役割をしている映画に着目してみました。図書館は誰もが自由に本を読める場所、というのは当たり前のようで、別の時代 には必ずしもそうではなかったのです。2つとも大おすすめ作です。


「アレクサンドリア」(2009年、スペイン)
ローマ時代に実在した図書館の史実にもとずいた物語。世界中から研究者が集まり、数学や天文学などの高度な研究をしていた。だが神の教えだけが唯一絶対とするキリスト教徒にとっては、誰もが新しい知識を自由に得ることができる図書館は許せない存在でした。暴徒たちは図書館を襲撃して破壊し、研究者たちを虐殺する。「学問は神への冒涜だ!」と叫びながら研究者を殺し、学問も殺してしまったのです。ガリレオの地動説弾圧はもとより、21世紀の現代でもダーウィンの進化論を否定するなど、キリスト教のおおもとにある反知性主義の源流を知ることができる映画です。

 手に手に十字架をかかげて「神は唯一なり!」
と  叫びながら図書館を襲撃する暴徒たち

↑  映画予告編
                                                              
「薔薇の名前」(1986年、仏 • 伊 • 独 合作)
ショーン • コネリー主演のミステリー映画。中世の修道院のなかにある図書館が舞台で、その蔵書が殺人事件の謎解きの鍵になっています。巨大な城のような図書館に古今東西の本が集められていて、時代別、地域別に分類されて各部屋に収蔵されている。だがそれは迷路のように複雑に配置されていて、そこに入ると方向感覚を失うような建築構造になっている。それは人に見られないように本を隠す場所としての図書館なのです。様々な知識が 広まると、キリストの教えだけが絶対ではないことを知られてしまうことを恐れたのです。侵入した部外者は殺害され二度と出られない恐ろしい迷宮としての図書館が描かれています。
 迷路のように複雑な図書館内部
 閉じ込められて必死で出口を探す主人公

↑  映画予告編









2015年8月15日土曜日

Sketch Book「マスキングを使って水彩」

ペンタイプのマスケットを見つけたので、テストでマスキングを多用して水彩を描いてみた。このマスケットは細い線も塗れてとても使い勝手がいい。


樹の枝の抜け、フェンス、道路の陽なた、などをマスキングした。マスキングのメリットは、細かいところの塗り残しなどを気にしなくていいので、太い筆でスピーディかつおおらかに描けること。またチマチマと描くとどうしても色が濁りやすいが、これだと色の透明感を保てるのがいい。

最後にマスキングをはがして、くっきりしすぎている白を弱め、機械的な感じをなくす調整をする。とにかく出来上がりまでが速い。 次はもうすこし本格的にやってみよう。






2015年8月10日月曜日

ミニギャラリー「地平線が低い風景画」


この絵にはびっくりです。地平線が極端に下8分の1くらいにあり、残りはすべて空白の空です。いくら歩いて行っても何も無いような空漠感を感じます。地平線を低くした絵を集めて、その効果を見てみました。




地平線を下げると当然空が広くなり主役になる。その雲の表情をドラマチックに描いています。地上は暗くぼんやりさせて、雲間からの光が射し込んでいるところの地面だけが明るい。この、空と地面の連動が大きな空間感を感じさせています。
(ロイスダール)




海辺に僧侶がたたずんでいる。自然の大きさと人間の無力さを対比させることで、「祈り」を表現したとされる有名な絵ですが、低い水平線と大きな空がその効果をもたらしています。
(フリードリヒ)





地平線は画面の下端ぎりぎりの低い位置。ダイナミックな雲の動きをとらえた、壮大な空間を感じさせます。
(コンスタブル)





物の形は消えて、地上も空もすべてが空気のなかに溶けてしまっています。描かれているのは大気と、そこに満ちている光だけです。
(ターナー)



広々とした夕方の空がやわらかく懐かしい雰囲気をかもしだしている、詩情たっぷりの絵です。
(ドービニー)



これらはみな、風景画に定番の、山や川や樹といった「物」を描くのではなく、それらをつつみこんでいる「空間」を描こうとしています。そしてその空間を満たしている空気の「空気感」を描こうとしています。

2015年8月4日火曜日

Sketch Book              「パステル画用サンドペーパーで」

最近初購入したパステル画用サンドペーパー (ライトグレー、#320 )をテスト使用している。今回は小学1年生の女の子をパステルペンシルだけで描いてみた。デッサン用の木炭紙に木炭で描いている感触によく似ていて、サクサクと色が乗る。そしてきめが細かいのに目づまりしない。当分これを使ってみよう。






2015年8月2日日曜日

閑人アーカイブ(13)「廃炉幻想」

公募展用に描いたばかりのパステル 40号。モチーフは近所にあるセメント工場ですが、イメージは汚染されて廃墟になった原発です。崩れて、ただの鉄や石のかたまりになってしまった「物質感」を出したくて、モデリングペーストでガチガチに粗いマチエールを作った上にむりやりパステルをのせています。やわらかくてやさしいパステルの特徴に逆らっています。
(「現代パステル協会展」に出品。東京都美術館、2015年   8/2 〜 8/10  )