2018年1月30日火曜日

映画「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」

Movie  " Gauguin Voyage de Tahiti "

文明社会を捨ててタヒチに渡ったゴーギャンは絵のモデルになる女性と出会う。その野生の美しさがゴーギャンにインスピレーションを与えるミューズとなり、名作が生まれていく。

本国へ作品を送るが売れたという知らせは来ない。生活に困って、土産物用の木彫を作って商売しようとしたり、肉体労働をしたりして日銭を稼ぐ毎日。やがて失意のうちにタヒチを去る。作品が現在のような名声を得るのは死後になってから。

”楽園”タヒチの風景が美しい。そしてゴーギャンのアトリエにはいつも北斎が飾られている。

2018年1月27日土曜日

風景 オホーツク海の夜明け

"The Sea of Okhotsk, Dawn"  Soft pastel on Canson paper

真冬の北海道、オホーツク海に面した紋別で一泊したとき、見事な夜明けを見ることができた。太陽が水平線の上に顔を出す直前、家々はまだ夜だが屋根の雪がかすかに明るくなり始める。夜と朝が切り替わるこの微妙な瞬間は、ほんの2〜3分の間だけ。
( パステル、ミ・タント紙、8号 )


2018年1月24日水曜日

ブリューゲル展

Brueghel Exhibition

去年の「バベルの塔」展と「ベルギー奇想の系譜」展で来たブリューゲルは怪物に人間が食われているなどの奇想絵画が主だったが、今回は庶民の日常を描いたものなど平和な絵が多い。右は農村の婚礼の光景で、人々が踊りまくっている。後ろの方では酒をラッパ飲みしていたり、どさくさに紛れて何かしている男女がいたり、といった楽しい絵。赤い色がリズミカルに使われている。

ブリューゲルで特に有名なのが雪景色の絵だが、今回「冬の風景」というセクションが設けられていて、この絵があった。凍った川でスケートをしている。右上の木に鳥がとまっているのが効果的。初日の昨日がたまたま大雪だったせいもあり、SNS でブリューゲルの雪の絵が飛び交っているようだ。( かなりの作品が撮影可 )
( 東京都美術館  ~ 4 / 1 )

2018年1月21日日曜日

風景 朝日の森

” Softly,  as a Morning Sunrise "    歌のとおり朝の陽は柔らかい。


2018年1月18日木曜日

映画「レッド・ドラゴン」と     ウィリアム・ブレイクの絵画

Movie  "Red Dragon"  &  Picture by William Blake

サイコ・サスペンス映画といえば、「サイコ」「羊たちの沈黙」「ミザリー」などの傑作があるが「レッド・ドラゴン」もひけをとらないなかなかの映画だ。

主人公は、表面は知的な医者だが実は精神の異常な殺人者で、次々に幸せな家庭を襲って一家を惨殺する。映画のなかで、前々回投稿の「怖い絵」であげたウィリアム・ブレイクの絵「巨大な赤いドラゴンと太陽の衣をまとった女」が重要な役割をしていて何度も登場する。映画の題名もここからきている。

ブレイクは幻視ができたようだ。心の中に現れる霊と交信して、霊が見せてくれるイメージを描写して絵を描いたという。目に見える風景や人物を描写してもそれは物事の表面を描いているだけで、目に見えていない真実を描くには霊が必要だ、と言っていたという。この絵は不気味な怪物に変身してしまった人間だが、人間の奥にひそんでいる悪魔性を描いている。横たわっている女性は怪物に襲われた犠牲者なのだろう。

だからこの絵は映画の主人公にそのまま重なる。監督にとって物語を象徴させるのにこの絵はぴったりだったのだろう。


2018年1月15日月曜日

森の朝を描いた(国際パステル展)

Pastel painting "Morning River"  (International Pastel Artists Invitational Exhibition )

森に朝日が昇り、川の水面に反射して太陽が2つある。夏の北海道ニセコで早朝に散歩をしていたとき出会った風景を描いた。「2017 国際パステル画家招待展」(@台北)に出品した作品。

展覧会図録(アメリカ人作家による表紙の静物画が見事)

2018年1月12日金曜日

怖い絵展に無かった怖い絵(その4)

Fear in Painting

絵とはいわば夢を描くものだから、いい夢の絵もあれば悪い夢の絵もある。もっぱら悪夢のほうを描いた代表の3人。


ロドルフ・ブレダンの「善きソマリア人」。一見わかりにくいが拡大して見ると、ラクダの首と人間の首が肉食植物に食われて、その毒液で溶けているという恐ろしい絵。ブレダンはひたすら森の中を歩きまわり、細かい葉に至るまで細密なリアリズムで描写したという。その体験が草の陰で増殖する異様な生命体という恐ろしい空想に結びついていったそうだ。




ウィリアム・ブレイクは夢からインスピレーションを得て描いたことで有名。実在する自然を描いても何も見えてくることはなく、夢の中で霊と交感することによってはじめて真実を見ることができる、と言っていたという。この「巨大な赤いドラゴンと太陽に包まれた女性」のように不可解で不気味な絵が多い。




18 世紀スイスのフュースリは恐怖や妄執といった情念を夢という形で描いた。この「夢魔」は馬の怪物に襲われる悪夢を見ている若い女性を描いている。もっとも図像学的には馬は「好色」のアイコンだそうなので、もしかしたらエロチックな夢なのかもしれない。


2018年1月9日火曜日

「ルドルフ2世の驚異の世界」展

Exhibition  " The Empire of Imagination and Science of Rudolf II "

神聖ローマ帝国の全盛期、ルドルフ2世の庇護のもとで芸術と科学が大発展したが、王の集めた絵画や文物のコレクションを見られる面白い展覧会。アルチンボルドの絵もあるが、この時代、帝国は世界進出していたので、珍しい動植物が入ってきたことがその絵の背景にあったこともわかる。

キリスト教の布教も世界中でやったヨーロッパ拡大の時代で、日本に来た宣教師もそういう人たちだった。彼らから受けた影響の例として「泰西王侯騎馬図」という江戸時代の絵師による屏風絵の展示があった。和洋折衷的な絵で、4人の王侯が描かれている。左端が本展の主役の神聖ローマ帝国ルドルフ2世で、オスマントルコ、ロシア、モンゴルの王と闘っている。この4人が各国の地理的位置関係どおりに並んでいるのが面白い。当時の世界情勢を表している絵で、そういう情報が日本にまでちゃんと伝わっていたのは驚きだし、神聖ローマ帝国が世界中に及ぼした影響力の強さもわかる。
( Bunkamura,  ザ・ミュージアム  〜3 / 11 )


2018年1月6日土曜日

怖い絵展に無かった怖い絵(その3)

Fear in Painting  (Part 3)

3つの時代の3つの怖い顔。






ルドンは花を描いた優しいパステル画が有名だが初めは正反対で、ムンクと同様に、内面の不安な感情を描いていた。夢の中のフロイト的潜在意識を描くのは 19 世紀末の象徴主義絵画の流れだった。




ドイツの画家エミール・ノルデは美しい風景画を描いていたが、ナチス政権になると戦争や虐殺に対する恐怖の感情を描いた。そのため徹底的に弾圧され、描くことを禁止された。


ギーガーは現代の怖い画家の代表。メカニックでしかもヌルヌル感の表現は CG の SF 映画が全盛の時代らしい絵だ。実際、ギーガーは映画「エイリアン」のエイリアンをデザインをしたことでも有名。


2018年1月3日水曜日

怖い絵展に無かった怖い絵(その2)

Fear in Painting  (Part 2)

「聖アントニウスの誘惑」は聖人が悪魔と闘うという繰り返し描かれた宗教画の定番テーマだが、怖い絵の宝庫だ。





無数の不気味な怪物が人間に食いついている。マックス・エルンストの「聖アントニウスの誘惑」で、怖さ No.1 だろう。 20 世紀のエルンストの表現は超リアルで、エイリアン映画も顔負けだ。拡大して見ると怖さが倍増する。




16 世紀ドイツの宗教画家グリューネヴァルトの「聖アントニウスの誘惑」(部分)。妖怪たちが人間に襲いかかっている。左下では身体じゅう虫食いにされて息絶えた人間をグロテスクな怪物が食おうとしている。



ブリューゲルの「聖アントニウスの誘惑」で、首だけになった人間が食い荒らされている。画面あちこちにも串刺しなどにされた人間が描かれている。