2018年3月29日木曜日

ギーガーとベックリンの「死の島」

Giger & Bocklin

前回のギーガーの続き。奥さんが亡くなった時のショックで描いた絵が紹介されていた。ギーガーらしい怪物のようなイメージの島が死を表現している。説明はなかったが、明らかにベックリンの「死の島」の引用のようだ。
ベックリンの「死の島」は 19 世紀の象徴主義絵画のいちばんの代表作。墓地の島へ白装束の男が棺を乗せた舟で入って行くという不吉な絵。死を象徴するこの作品をヒトラーが持っていて総統室に飾っていたのは有名だが、なにか暗示的な話しだ。


この絵の影響は大きく、ギーガー以外にもたくさんの引用作品がある。新しい例では原子力発電所を「死の島」のイメージで描いた作品(サイチナク「ベックリンに基ずく」)がある。「原発と死」というテーマは何かを連想させられる。

2018年3月28日水曜日

ギーガーのドキュメンタリー   「Dark Star H.R.ギーガーの世界」

Movie "Dark Star" and H.R.Giger

ギーガーの人と作品を紹介するドキュメンタリー映画が来た。ギーガーは映画「エイリアン」のエイリアンをデザインしたことでも有名。金属的なメカと爬虫類的な生物を融合させた CG 的な表現は「バイオメカニカル」と呼ばれる。制作シーンがあるが、絵のサイズはかなり大きく、エアブラシで描いているがフリーハンドで、マスキングは使っていない。

自宅内部がすみずみまで紹介されているが、カーテンを閉めきった暗い部屋の中は動物の骨や人間の頭蓋骨やエイリアンっぽい彫刻など奇怪なものであふれている。迷宮のような部屋自体がギーガーの心の闇を見るようで興味深い。

エイリアンのもとになった原画

2018年3月25日日曜日

大岡川散歩


地元の大岡川沿いにある弘明寺という桜の名所はもう満開になっている。大岡川は氷取沢という山の中の小さな源流から始まって、みなとみらいの河口まで、横浜の真ん中を横切って流れる。上流から下流まで風景が変化に富んでいて、どこも散歩を楽しめる。







2018年3月22日木曜日

フェルメールの絵の「カーテン」

"Curtain" in Vermeer's paintings

フェルメールの室内画にはカーテンがよく出てくる。これは空間の奥行き感をだすためだろうと思っていたがそれだけではないそうだ。右はフェルメールと同時代の人の作品だが、絵にカーテンがかけられていて、それを女中が開けてのぞき見している。絵をカーテンで隠しておくのは当時は普通だったそうだ。昔の日本でテレビにカーテンをかけていたのと似たような感覚だろうか。

フェルメールはこのようなカーテンを絵自体に描き込んでしまったのだという。絵を見る人にカーテンを開けて覗き込んでいるような感覚を与えようとしたのか、舞台の幕が開いて劇が始まる的に絵をドラマチックに見せようとしたのだろうか。だからカーテンはいつもいちばん手前に描かれている。


2018年3月19日月曜日

驚きの "編み物アート" の世界

Movie  "YARN"

手芸のイメージしかなかった編み物だが、それを表現メディアにしたアートの世界があることに驚いた。「YARN 人生を彩る糸」というドキュメンタリー映画で世界の編み物アーティストと作品が紹介されている。インスタレーション、グラフィティ・アート、舞台デザイン、などジャンルも様々。

日本人アーチストの堀内紀子のインスタレーション。ビルの間に吊るした巨大ハンモックに乗って子供が遊べる。子供が動きまわるにつれてフォルムが変化していくのが面白い。伸縮性の強いナイロン糸を、普通に手編み棒で1年間かけて編んでいる。なお、この人の作品が「箱根彫刻の森美術館」にもあるそうで、行ってみたい。

2018年3月16日金曜日

水彩画家 Kさんの個展


旧知の水彩画家 Kさんの毎年恒例の個展。DMの作品はフランスの田舎で描いたそうだが、水の流れる音が聞こえてきそうだ。じっくり腰を落ち着けて3時間くらいかけて描いている。このくらいその場の空気感を表現できると現場描きはいいなと思う。(京橋  ギャラリー  びーた)




2018年3月13日火曜日

映画「ジャコメッティ 最後の肖像」

Movie  "Final Portrait"

画家がテーマの映画は、人間ドラマを絡めたり、伝記ものであったりすることが多いが、これは一枚の肖像画の制作の始めから完成までを描くことだけに徹している。だからジャコメッティの創作過程を生々しく見ることができる。

普通、肖像画といえばモデルに近ずくことが目標だが、ジャコメッティの場合は逆で、モデルはスタートにすぎず、そこから自分のイメージの中の像を描いていく。しかしイメージは初めからはっきり見えているわけでないので、描くことを通してそのイメージを探していく。だからちょっと描いては「クソ!」と言って頭を抱える苦悶の繰り返しになる。そしてやっと完成が近ずいたかと思うと塗りつぶしてしまい、また一から描き直し始める。このモデルは美術評論家で、2〜3時間で終わるからと無理やりモデルにされたが結局3週間も拘束されてしまった。その体験を書いた本をもとに映画化されている。

(なお日本人哲学者の矢内原伊作も長いあいだジャコメッティと親交があり、何度もモデルを務めたが、奥さんと不倫関係だった。ベッドの上に日本人がいるシーンが一瞬だけ出てくるのはこの矢内原のこと。)


2018年3月10日土曜日

マリアナ・ガートナーの絵画



マリアナ・ガートナーという現代画家の作品。全身にタトゥーが入れられていて、表情は赤ん坊らしい可愛いさがない。どういうこと?に対して説明はまったくない。絵から読み取ろうとしてもできない。

絵は長い間ずっと文字の読めない大衆に宗教や神話の物語を理解させるためのものだった。そのためか人は絵を見ると「分かろう」とするクセがついている。この作家は、そういう絵の見方を否定するためにわざと解釈不能の絵を描いている。人それぞれにどうとでも「感じて」くださいというわけだ。

(写真はHPより)  http://www.mariannagartner.com/index.php 

2018年3月7日水曜日

映画「シェイプ・オブ・ウォーター」がアカデミー賞に

Movie  " The Shape of Water "

今年のアカデミー賞は「シェイプ・オブ・ウォーター」に決まった。半魚人と言葉を喋れない女性との心の通じ合いを描いた一種のファンタジー映画だが、「E. T.」と「美女と野獣」を足して2で割ったような安直な内容のうえ、それをスパイ映画もどきの筋立てにしているから、全体的にウソっぽくてしらける。

このギレルモ・デル・トロ監督の 10 年くらい前の作品に「パンズ・ラビリンス」というファンタジー映画の最高傑作がある。これは「芸術家はウソで真実を語る」を体現している名作だった。逆に語りたい真実がない場合は、ウソはウソのままで、面白がらせるだけの映画になってしまう。

2018年3月4日日曜日

映画「デトロイト」

Movie  "Detroit"

アメリカでは毎年 300 人くらいの黒人が白人警官に射殺されているという。武器も持っていないのにいきなりパーンとやるのだが、起訴されてもほとんどが無罪になるそうだ。警察や裁判所を白人が牛耳っているからだが、その不公正の実態が「ミシシッピー・バーニング」という映画で暴かれていた。この「デトロイト」でもそんなアメリカの真実を 1967 年に実際にあった事件をもとにドキュメンタリー風に生々しく描いている。

デトロイトで黒人の暴動が起きエスカレートして銃撃戦になる。戦車まで出動し警官も狂気のように暴行しまくる。混乱の中で無関係の黒人の若者たちが狙撃犯と誤認されて捕まる。白人警官の凄まじい拷問が執拗に続き、最後には1人を殺してしまう。結局この事件でも警官は無罪になる。そんなアメリカの暗黒面を告発している映画だ。

今年のアカデミー賞(明日3 / 5発表)の有力候補だという「スリー・ビルボード」にも人種差別主義の警官が出てくる。しかしこの映画では警官の不当さよりも、警官に抗議する被害者の方を変人のクレイマーとして描くことが主になっている。そして「デトロイト」の方はノミネートさえされなかったのが不思議だ。

2018年3月1日木曜日

プラド美術館展

Exhibition  "Velazquez, Prado"

「ベラスケスと絵画の栄光」というサブタイトルどおり、7点のベラスケスなどスペイン美術が中心だが、他にもルーベンスやブリューゲルなど同美術館所蔵の重量級作品をたくさん見ることができる。(国立西洋美術館、〜5 / 27 )

ベラスケスは、宮廷画家なのに雇い主の王様の肖像画をあまり偉そうに描かず、ありのままの人間として描いた。今回来ていたフェリペ4世の絵もカジュアルな服装で、特別に飾りたてていない。しかし、いちばん有名な、王家の宮廷内のシーンを描いたこの作品は残念ながら来ていなかった。