2013年11月21日木曜日

映画「オランダの光」

10年くらい前の映画だが、その存在に気がつき、今回初めて観た。17世紀のオランダ絵画の黄金期の絵を「光」との関係で科学的に分析するドキュメンタリー。観ていて「なるほど、そうだったのか」の連続だった。
オランダの地形と気候によって生まれる独特の光がその絵画を生んだという。オランダの国土のかなりの面積を占めるアイセル湖という広大な湖に太陽の光が当たり、その反射光が雲を照らす。その光が再び地上にもどってくるその過程で、柔らかで透明感のある微妙なニュアンスの光になる。そのことを、科学実験や、1年間の風景の変化の定点カメラによる撮影などによって検証している。
その結果を実際の絵画作品と照らし合わせながら、いかにオランダ独特の光が絵画に影響を与えているかを教えてくれる。映画で、フェルメールをはじめ、たくさんの絵画が登場する(下図はその一例)。これらは風景を描いているというより、光を描いていると言ってもいいと思う。それはオランダの、山がなく平坦で、地平線まで何も無いという地形も影響していて、関心は空と雲に向かう。だから、どの絵も地平線が画面の下のほうに置かれ、大きな面積を占める空の微妙な表情を捉えようとしている。
映画では、国や土地によって「光」はみな違うが、その違いがそれぞれ独自の絵画と、ひいては文化を生み出していて、それが現代絵画にまで続いていると結論づけている。


2013年11月19日火曜日

国東半島にて

先月、大分へ行った時見た田園風景を思い出しながら描いてみた。
霧雨の降る寒々しい日でした。

2013年11月11日月曜日

水彩画の展覧会 2つ

2人の知人が出展している展覧会、たまたま場所も同じ銀座、会期も同じ今日 11/11から、という両方の展覧会を観に行った。


「第7回  水彩家族展」(銀座、文春画廊、11/11 ~ 11/16)
大学の同級生のMさんは、日本水彩展などで活躍していた人だが、兄弟姉妹がみんな絵を描くので、毎年家族展をやっている。とてもほのぼのしたいい展覧会だ。


「第19回  銀座水彩画展」(銀座、渋谷画廊、11/11 ~ 11/17)
日本水彩展の会員や会友の有志が毎年開いているグループ展で、40号くらい以上の大きい作品の水彩画を展示している。さすがにレベルが高い。メンバーのひとりKさん(下の人物画の作者)は、会社でいっしょにデザインの仕事をしていたときの同僚。Mさん(下の風景画の作者)は、大学の先輩。




2013年11月9日土曜日

日本最古の石造水路橋

11月8日の日本経済新聞に掲載されていた記事(佐藤和四郎氏執筆)の紹介です。福岡県の大牟田市に「早鐘眼鏡橋」という石橋があり、これが現存する日本最古の石造アーチ型水路橋ということです。水路橋というのは人間が通るためではなく、農業灌漑用の水路を通す橋のこと。1674年に作られたというので、江戸時代初期の 340 年も前のものということになります。この地域には、複数の石工集団が存在していて、たくさんの仏像や灯籠など石造物の作品が残っているなかのひとつがこの橋とのこと。見に行きたくなります。


2013年11月6日水曜日

「絵画」や「画家」が主題の映画(改訂版)

以前、載せたデータにだいぶ抜けがあることが分かり、改訂版を作った。倍くらいの70 作品以上になり、かなり完璧になってきたと思う。


2013年11月5日火曜日

石橋:アーチの魅力



この2枚の写真は、以前も書いた大分の院内という地域にある石橋群のひとつ「両合川橋」。アバウトで頼りにならない地図を片手に田舎道をさんざん迷いながら、やっとたどりついたが、景色がすばらしい。谷に向かい合うように両側の斜面が棚田で、両方を結ぶ道に石橋が掛けられている。名前もそこから来ているそうだ。大正時代に作られた古い橋だが今も農道として使用されている。長さが約 10mで、幅は3mもない小さい橋だが、どっしりとした石の量感とアーチの形がかもしだす存在感がすごい。石橋の魅力はやはりアーチにある。50年くらい経った鉄やコンクリートの橋の老朽化が最近問題になっているが、100 年近く経ってもいまだにしっかりしている石橋の耐久性は立派。


ユベール • ロベールという18世紀フランスの風景画家がいるが、石の橋をたくさん描いている。それらはアーチの魅力をたっぷり見せてくれてとても惹かれる絵だ。ローマ時代の遺跡などを参考に頭のなかで作り上げた風景だという。彼は基本にローマ時代の文化に対するあこがれがあって、その文化の永遠性を描こうとした絵だと言われている。そのために、何百年経っても生き続けるアーチをその象徴として題材に使っている。







ユベール • ロベールは橋以外に建築も描いている。大きな内部空間を柱なしで石で作ろうとすると必然的にアーチ構造になるわけで、そのような建物をたくさん描いている。面白いのは下の例で、フランス革命で王制が崩壊したのにともなってルーブル宮殿を画廊に改装して、市民に開放するというプロジェクトの内装デザインを彼がまかされたそうだ。左の絵はそのときの一種の完成予想図(レンダリング?)のような目的で描かれたらしい。アーチ構造の天井を明かり取りの天窓にしている。そして右は同時に描いた絵で、なぜか自分のデザインしたこの画廊が何百年後かに廃墟になったら、という想像図だという。屋根の落ちた画廊に転がっているギリシャ彫刻を画家がスケッチしているシーンで、芸術の永遠性を表現しているという。(Dubin :「Futures & Ruins」より)






2013年11月2日土曜日

「ゴッホ、スーラからモンドリアンまで」展

ゴッホ、スーラからモンドリアンまで
〜印象派を超えて、点描の画家たち〜
国立新美術館 10/4 〜 12/23

新印象派の中から点描の画家を取り上げ、その表現様式が発展していった流れを見せている。ゴッホの筆触分割からスーラの点描へ進化し、さらに極限まで進めた最終形がモンドリアンであると展覧会では言っている。これにはどうしても違和感を感じてしまう。純粋な単色を並列させるという意味ではそうかもしれないが、モンドリアンの抽象絵画としてのそれとは意味が違うと思う。モンドリアンも初期には点描画を描いていたこともその根拠にしているのかもしれないが。


ミケランジェロ展

国立西洋美術館で、「システィーナ礼拝堂500年祭記念ミケランジェロ展」というのをやっている。展覧会は見ていないが、それで思い出したことがあるので、あまりたいしたことではないが、書きとめておきたい。あの高くて巨大な天井にすごい数の人物像をどうやって描くのか、という疑問が解消した映画がある。チャールトン•ヘストンがミケランジェロ役をやった「華麗なる激情」という古い映画だが、システィーナの天井画を描く工程がよく分かる。
原寸大に拡大した線描きの紙に弟子が線に沿ってキリで穴を開けていく。(ミケランジェロが描いた下絵を弟子が拡大していると思うが、そのやりかたは映画に出てこない。)



紙を壁にあてがい、その穴の開いた線の上から黒い絵の具をすりこんでいく。ここがいちばんなるほどと思ったところ。
紙をはがすと、穴からすりこまれた黒色の点線で線図が転写されている。なお、人物は一人づつ描いていくが、一人分の下地を白く塗っておく。


ミケランジェロが着色していく。





これで人物一人分が完成。





木材で高い足場を組んだ上で、たくさんの弟子を使ってこれらの作業していく。映画の工程は、おそらく実際に当時行われていたとうりなのだろうと思う。