2013年11月5日火曜日

石橋:アーチの魅力



この2枚の写真は、以前も書いた大分の院内という地域にある石橋群のひとつ「両合川橋」。アバウトで頼りにならない地図を片手に田舎道をさんざん迷いながら、やっとたどりついたが、景色がすばらしい。谷に向かい合うように両側の斜面が棚田で、両方を結ぶ道に石橋が掛けられている。名前もそこから来ているそうだ。大正時代に作られた古い橋だが今も農道として使用されている。長さが約 10mで、幅は3mもない小さい橋だが、どっしりとした石の量感とアーチの形がかもしだす存在感がすごい。石橋の魅力はやはりアーチにある。50年くらい経った鉄やコンクリートの橋の老朽化が最近問題になっているが、100 年近く経ってもいまだにしっかりしている石橋の耐久性は立派。


ユベール • ロベールという18世紀フランスの風景画家がいるが、石の橋をたくさん描いている。それらはアーチの魅力をたっぷり見せてくれてとても惹かれる絵だ。ローマ時代の遺跡などを参考に頭のなかで作り上げた風景だという。彼は基本にローマ時代の文化に対するあこがれがあって、その文化の永遠性を描こうとした絵だと言われている。そのために、何百年経っても生き続けるアーチをその象徴として題材に使っている。







ユベール • ロベールは橋以外に建築も描いている。大きな内部空間を柱なしで石で作ろうとすると必然的にアーチ構造になるわけで、そのような建物をたくさん描いている。面白いのは下の例で、フランス革命で王制が崩壊したのにともなってルーブル宮殿を画廊に改装して、市民に開放するというプロジェクトの内装デザインを彼がまかされたそうだ。左の絵はそのときの一種の完成予想図(レンダリング?)のような目的で描かれたらしい。アーチ構造の天井を明かり取りの天窓にしている。そして右は同時に描いた絵で、なぜか自分のデザインしたこの画廊が何百年後かに廃墟になったら、という想像図だという。屋根の落ちた画廊に転がっているギリシャ彫刻を画家がスケッチしているシーンで、芸術の永遠性を表現しているという。(Dubin :「Futures & Ruins」より)






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