浮世絵や絵巻物など”正統派”の江戸文化研究からはみ出した”へんちくりん”な江戸の出版文化を取り上げた本だ。江戸では、様々な情報や知識が本によって人々に伝達されたが、それらの多くは挿絵が中心で「挿絵本」と呼ばれた。そういう本が一般的になると、それを茶化す挿絵本もたくさん出版された。誰でも知っている本の内容をパロディ化して人々を面白ろがらせた。「へんちくりん江戸挿絵本」はそういう江戸人の遊び心をたくさんの事例で示している。
閑人の絵日記
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2026年6月18日木曜日
「へんちくりん江戸挿絵本」
浮世絵や絵巻物など”正統派”の江戸文化研究からはみ出した”へんちくりん”な江戸の出版文化を取り上げた本だ。江戸では、様々な情報や知識が本によって人々に伝達されたが、それらの多くは挿絵が中心で「挿絵本」と呼ばれた。そういう本が一般的になると、それを茶化す挿絵本もたくさん出版された。誰でも知っている本の内容をパロディ化して人々を面白ろがらせた。「へんちくりん江戸挿絵本」はそういう江戸人の遊び心をたくさんの事例で示している。
2026年6月17日水曜日
映画「Mank / マンク」
「Mank」
映画「Mank / マンク」(NETFLIX, 2020)を見たが、オーソン・ウェルズの不朽の名作「市民ケーン」にすごい裏話しがあったことを初めて知った。映画は、マンクが「市民ケーン」の脚本を書き上げるまでの苦悩や闘いを描いている。アルコール依存症のマンクは、ウェルズに脚本の執筆を依頼されるが、期限はたった 90日・・・映画はその過程を、1930年代のハリウッドの回顧をはさみながら描いている。
マンクは、クレジットにウェルズの名前だけが載り、自分の名前が載らないことを知って激怒する。映画会社に抗議してやっと二人の連名にさせる。ところが「市民ケーン」はアカデミー賞のすべての部門にノミネートされていながら、受賞したのは脚本賞だけだった。映画の最後でマンクがアカデミー賞のトロフィーを抱いて満足げな表情で、インタビューを受けるシーンで終わる。
2026年6月16日火曜日
イングランドとスコットランド 二人の女王
Queen Erizabeth & Queen Mary
ワールドカップが始まったが、いつもながらイギリスだけが4チームが出場できるのはズルイ(?)と思うが、そもそもイギリスの正式名称は UK(United Kindom)で、4つの王国の連合国だから仕方ない。それらがひとつの国になるまで因縁深い歴史があるが、なかでもイングランド対スコットランドの歴史はドラマチックだ。
数年前にあった「怖い絵展」で、目玉作品が「レディ・ジェーン・グレイの処刑」という歴史画だった。若いスコットランド女王がイングランドへの裏切りを疑われて、斬首の処刑をされる瞬間を描いている。右側に斧を持った処刑人が立っている。
2026年6月15日月曜日
江戸のボタニカルアート
Botanical Art in Edo
ボタニカル・アートが流行っているようで、そんな教室の生徒さんの作品展を見かけたりする。植物を写真のとうりありのままに描く、植物図鑑の挿絵と同じで「自己表現」をする絵画ではない。
そんな絵は江戸時代からすでにあった。「江戸の想像力」(田中優子)に、その始まりが書いてあって面白い。平賀源内は日本全国の動植物を集めて展示する「薬品会」というイベントを主催していた。源内は「本草学」という、今でいう「博物学」の研究をしていたが、同じアマチュアのマニアが全国にたくさんいて、源内の呼びかけに応じて千数百種類が集まったという。
会が終わると、「物類品種」という出品物の挿絵入りの図録を発行した。その挿絵は、浮世絵のような「絵画」ではダメで、写真のようにひたすら写実的に描く画家に描かせたそうだ。彼らは無名だが、西洋絵画の手法を学んだ人たちだったという。
2026年6月14日日曜日
アマルフィの風景 映画「リプリー」とエッシャー
Amalfi, 「Repley」and Escher
鎌倉の高台に海一望の「アマルフィ」というイタリアンの店がある。店の名前はもちろんイタリアの景勝地アマルフィから来ている。そのアマルフィが映画「リプリー」に出てくる。主人公がアマルフィにある超金持ちの大豪邸を訪れてくる・・・
これがそのシーン。崖の上に、海へ突き出すかのように家が建っている。中世風の古い家が密集していて、教会の塔が見える。
自分ではアマルフィへ行ったことはないが、このシーンでエッシャーの絵を思い出した。エッシャーは若い頃、イタリアに移住して風景画を描いていた。なかでもアマルフィーが好きで、多くの作品を残している。これはそのひとつで、上の実景写真と比べると、かなり緻密に写実的に描いていることがわかる。教会の塔や建物などが上の写真とぴったり合っている。そもそも映画の映像は、この絵をもとにしているのではないか。俯瞰のカメラアングルがよく似ている。
もうひとつエッシャーのこの絵で、上とは反対の陸側からアマルフィの街を見ている。手前の下の方に細い道が描かれているが、階段やトンネルが複雑に入り組んでいて迷路のようだ。
このイメージも映画「リプリー」に出てくる。土地が狭いせいか、道が建物の下をくぐっていて地下道のようだ。そして坂が多いので、その道がすべて階段になっている。この階段とトンネルが入り組んだ迷路のようになっていて、主人公が迷子になりながら歩いている。
このシーンに相当するエッシャーの作品がないか、エッシャーの画集を見たらあった。3方向に階段が続いている道の中央から出口が見えている。上の映像そのままだ。後年エッシャーは視覚を欺くような不可思議な絵を描いたが、そのイメージの源泉がこの時のイタリアの経験から来ているといわれている。
2026年6月13日土曜日
映画「リプリー」の映像表現
「Repley」
NETFLIX 版の「リプリー」は昔の「太陽がいっぱい」と同じ原作の映画化だが、演出のスタイルがまったく違う。同じ犯罪映画であるが「太陽がいっぱい」明るい太陽のもとで起こる事件だったが、「リプリー」では人間の暗部を描くダークな「フィルム・ノワール」になっている。
名作フィルム・ノワールが白黒映画であったようにこの映画も白黒で、モノクロームを活かした映像の美しさがが素晴らしい。例えばこの夜の街のシーンで、街灯の光が雨に濡れた道を照らしている。全体は暗い闇に包まれていて、登場人物もシルエットだ。人間の暗部や、都市の不安な空気感を描いている、このような光と影の効果による陰影に富んだ映像表現は。フィルム・ノワール映画の定番手法だ。
2026年6月12日金曜日
映画「リプリー」に出てくるカラヴァッジョ
Caravaggio in the movie「Ripley」
「リプリー」(NETFLX)というサスペンス映画で、カラヴァッジョの絵画が登場する。アメリカ人の自称画家の主人公が、依頼されたある仕事のためにイタリアへ行く。そして殺人事件を起こし、警察の追求を逃れてイタリア各地を転々とする・・・映画は白黒だが、イタリアの歴史的な建築・彫刻・絵画が頻繁に登場する。その中で、カラヴァッジョの名作「マタイの召命」が登場する。主人公はカラヴァッジョが好きで、イタリア旅行中も分厚い画集をつねに持ち歩いている。映画は、巨匠でありながら犯罪者として常に逃亡生活を送っていたカラヴァッジョを、同じくイタリアを転々とする主人公のメタファーとして使っている。主人公は画集で見ている「マタイの召命」を飾ってある教会へ実際に見に行く。光と闇を許烈なコントラストでドラマチックに描く「キアロスクーロ」の巨匠カラヴァッジョの最高傑作だ。
祭壇の周囲をコの字型に囲むように3つの絵が飾られていて、左側の絵が「マタイの召命」。3枚の絵は聖書の物語の場面で、あたかもそのシーンがこの祭壇でいま実際に起こっているかのように見せようとしている。
そのためにカラヴァッジョはある計算をして絵を描いている。教会内の光の方向と絵の光の方向を一致させることだ。正面中央の上部に天窓があり、そこらの光が3枚の絵を照らしている。だから左の絵は右光源で描かれていて、右の絵は左光線で描かれていて、中央の絵は上光源で描かれている。