2026年8月31日月曜日

エットーレ・ソットサス展

 Ettore Sottsass

アーティゾン美術館で「エットーレ・ソットサス展」が開かれている。しかしあまり見に行く気にならない。

ソットサスは 1960 ~ 1970 年代にかけて、オリベッティの製品のデザインを手がけていた。機能主義のデザインだが、ドイツの機能主義と違ってイタリアらしい温かみのあるデザインだった。その頃のソットサスの製品デザインはデザインの教科書のような憧れの存在だった。

例えばこの「テクネ3」(1964年)というタイプライターは、端正な造形が美しい機能主義デザインの見本だった。


上はプロ用だが、こちらは一般コンシューマー向けのタイプライターで有名な「ヴァレンタイン」(1969年)。すこしポップなデザインだが、キャリングケース(愛称がバケツだった)にすっぽり入れて持ち運べる便利なデザインだった。パソコンがない時代で、自分でも買って使っていた。


大型コンピュータの「エレア9003」(1959年)は大型コンピュータだが、ディスプレーのように見えるのは操作パネルで、ボタンをグラフィカルに配置している。今の時代に普通になるGUI の考え方を先取りしていた。


「シンテシス45」(1970年)はオフィス用家具で、モジュールによるシステム家具のはしりだった。


1980 年代になると、世界的な「ポスト・モダン」の時流に乗って、「メンフィス」というグループを結成して一世を風靡する。それまでの機能主義を捨て、鑑賞用オブジェのようなデザインへ行ってしまった。


2026年8月30日日曜日

映画「マグニフィセント・セブン」

The Magnificent Seven 

「マグニフィセント・セブン」(2016年)は 10年ほど前の映画だが、 NETFLIX で配信が始まったのでさっそく見た。黒澤明監督の名作「七人の侍」を西部劇に変えたリメイク映画だが、なかなかよくできている。「七人の侍」は、七人の野武士が、野盗の軍団の襲撃から村を救うという物語だが、こちらでは悪徳鉱山会社の大軍団が住民の土地を奪おうと攻めてくるのを7人のガンマンが救うというふうに変えている。


「七人の侍」のリメイクといえば何といっても大ヒットした名作「荒野の七人」(1960年)が有名だが、これも原題は「The Magnificent Seven」だから、今回の「マグニフィセント・セブン」はリメイクのリメイクといえるかもしれない。


こういう歴史を見ると、改めて黒澤明監督と「七人の侍」(1954年)が、いかに世界からリスペクトされきたかがわかる。


2026年8月29日土曜日

「敗北を抱きしめて」(続きの続き)

 Embracing Defeat

第二次世界大戦後の日本人を描いた「敗北を抱きしめて」は、下巻の最後のページでこんな漫画を取り上げている。アメリカの占領が終わりに近づいた頃の加藤悦郎の漫画だ。

「占領」という檻から日本人が釈放され、「安保条約」と書かれた別の檻に入れられようとしている。その檻の鍵はアメリカ軍兵士が握っている。

この頃になると東西冷戦が激しくなり、朝鮮戦争も起きた。アメリカは、日本に再軍備を命令して、警察予備隊(自衛隊の前身)が生まれた。そして日本全土にアメリカ軍基地を張り巡らせた。「日本の非軍事化と民主主義化」という占領初期のアメリカの政策は逆転してしまった。この漫画はそんな日本の哀しい状況を描いている。

右は同じ加藤悦郎が戦後すぐに描いた漫画で、アメリカの占領軍が日本を軍国主義から救った解放軍として描いていた。このような「平和」と「民主主義」の理想を追求していた日本人の夢は同じアメリカによって打ち砕かれた。

その問題は 80年たった今も、憲法改正問題などのように未解決のまま続いている。同書の最後で著者はこう言っている。『日本の敗北とアメリカの占領は多くの遺産を残したが、同時に大きな問題を残した。しかしその問題はまだ何ひとつ決着をみていない。日本がどこに着陸するのか誰にもわからない。』


2026年8月28日金曜日

ドキュメンタリー「WHAT THE HEALTH」

What the Health 

ネットには高齢者むけの健康情報が溢れている。NETFLIX の「WHAT THE HEALTH」というドキュメンタリーを見ると、そんな情報を安易に鵜呑みにしてはいけないことがわかる。

医者は、健康にいい食事は、米などの炭水化物と、肉などのタンパク質と、野菜などのビタミンをバランスよく摂れと必ず言う。しかしこの番組は、肉や乳製品や卵などの動物性食品は、糖尿病やガンや心臓病などの原因になると警告している。

そもそもタンパク質は植物に最も多く含まれている。だから馬や牛などの草食動物はみな体が大きく強い。肉食動物はその草食動物を食べることで間接的にタンパク質を補っている。植物性食品は必要なすべての栄養素を含んだ完璧な食べ物だという。人間も動物性の食べ物をいっさい摂らず、植物性の食べ物だけを食べるのが最も健康にいいという。

しかし食品業界は、動物性食品の害について何も言わない。番組はそのことを食品業界にただそうとするが取材を拒絶される。そして糖尿病協会やガン協会や心臓病協会などの健康を守るべき医学団体にも取材を申し込むがやはり拒否される。医学団体は食品業界から多額の資金援助を受けているからだ。


2026年8月26日水曜日

「敗北を抱きしめて」(続き)

 Embracing Defeat

一昨日、ジョン・ダワーの「敗北を抱きしめて」について書いた。→
https://www.blogger.com/blog/post/edit/5842824525266145803/5499197433097563952


もう少し追加をすると、この本の序文で著者は、こんなことを書いている。

「この本の目的は、世界で最も苦しい敗北をした日本の人々が、敗戦後に直面した苦難を伝えることでことであり、同時に敗戦にたいして日本人がみせた多様で、エネルギッシュで、矛盾に満ちた、素晴らしい反応を描くことである。」

「日本人にとって敗戦は、自己変革のまたとないチャンスでもあった。「よい社会」とは何なのか。この途方もない大問題が敗戦の直後から問われ始め、この国のすみずみで、男が、女が、子供までもが、この問題を真剣に考えた。そしてなんと多くの日本人が「平和」と「民主主義」の理想を真剣に考えていたことか!」 

「それは、戦勝国アメリカが改革を強要したからではなく、それをチャンスと捉えて多くの日本人が変革の筋立てを自ら前進させた。そういう国民の声を背景に、政治家や官僚は、改革を実行していき、「農地改革」「選挙制度化改革」「憲法改正」「労働法改革」「教育改革」など今日まで続く国の根幹を作っていった。」

このような状況を表している資料として同書は、当時の加藤悦郎の漫画をあげている。巨大なアメリカのハサミが日本の国民を抑圧してきた鎖を断ち切り、国民は解放の喜びにひたっている。その背後で、保守的な政治家と軍人が逃げ出している。これは終戦のわずか2ヶ月後の漫画だ。


それから80年たった今、世界の環境は激変し、日本の「国の在り方」が問われ始めているが、この本はその議論をするうえでの示唆に富んでいる。 


2026年8月25日火曜日