2026年9月15日火曜日

映画「ブルータリスト」

 Brutalist

去年のアカデミー賞を受賞したが、劇場での公開があっという間に終わってしまったため、見逃していた「ブルータリスト」が NETFLIX で始まり、やっと見ることができた。ハンガリーのユダヤ人建築家が、ホロコーストを逃れて、アメリカへ亡命する。建築や家具のデザインをするが、そのアメリカンドリームの成功と挫折を描いている。

戦後、コンクリート打ちっぱなしの無骨なデザインの「ブルータニズム」の建築が流行ったが、そういう建築家は「ブルータリスト」と呼ばれた。主人公もその一人で、題名はそこからきている。

主人公は実在した人物ではなく、特定のモデルはいない。しかし、戦前にバウハウスで建築を教えていたユダヤ人で、アメリカへ亡命したマルセル・ブロイヤーがモデルに近いのではないかと思う。登場する作品は架空のものだが、バウハウスのデザイン思想に沿っている。たとえば、主人公が読書用椅子のデザインをするが、マルセル・ブロイヤーが始めたパイプ家具の考え方を踏襲している。

映画の最後に主人公の設計した教会が出てくる。これも実際にはない架空の建物だが、礼拝堂のデザインがコンクリート打ちっぱなしの飾り気のない、まさに「ブルータリズム」の建築だ。人間を圧迫するように取り囲んでいるのは強制収容所の壁であり、天窓から差し込む光は、救いを求めて祈る神の存在を象徴している。

この空間の天井の中央に十字架の形をした隙間がある。ここから差し込む太陽の光が床に当たって十字架を形作る。

この光の十字架は、同じくブルータリストの安藤忠雄の教会(大阪府茨木市のキリスト教会)のデザインを思わせるが、監督は、安藤忠雄からインスピレーションを受けたと言っている。

安藤忠雄の「光の教会」


2026年9月14日月曜日

宇宙軍

 Space Force 

「宇宙」が科学研究の対象だった時代は過ぎて、今では宇宙技術は重要な軍事技術になった。ウクライナ戦争でも、監視衛星や通信衛星が活躍している。中国が衛星を撃ち落とす技術を開発したという報道もあった。だから今どき、衛星打ち上げや、月面探査などに昔ながらのロマンを感じる人はいない。

JAXA の宇宙技術も、安全保障分野への利用や、防衛省との連携が法律で規定されている。 先日も防衛省が、宇宙での情報分析をする「AI 衛星」を開発するという新聞報道があった。

アメリカでは数年前「宇宙軍」が創設された。陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊、に続く6番目の軍種だ。在日アメリカ宇宙軍も配備されている。任務は、衛星による監視や、情報分析や、ミサイル攻撃の判断などを行う。


去年(2025年)「星つなぎのエリオ」というアニメが公開されたが、その中に創設されたばかりの宇宙軍がもう出てきたので驚いた。主人公のエリオ少年が宇宙に行って、悪い宇宙人をやっつけるという冒険物語だが、エリオの育ての親の叔母さんが宇宙軍基地の司令官の少佐で、基地の様子が出てきた。

映画でもうひとつ NETFLIX で「スペース・フォース」という宇宙軍を題材にしたシリーズドラマが配信されている。

創設された宇宙軍の最高司令官に任命された将軍が、宇宙のことをわかっていない素人だが威張ってばかりいて、部下の専門技術者たちから馬鹿にされている。月に宇宙基地を建設しろという大統領の命令を一生懸命に実現しようとするがトンチンカンなことばかりやって失敗が続き・・・

といった宇宙軍をバカにしたコメディ映画だが、実は宇宙軍を作ったトランプ大統領を批判する皮肉が込められているとされている。

2026年9月13日日曜日

「イコールアース図法」の地図

 Equal Earth Projection

昨日(9 / 12)のニュースで、北方領土の地図で、日本とロシアがもめていることを伝えていた。

国連が推奨している「イコールアース図法」の地図で、北方4島がロシア領の色になっているのを日本政府が抗議して、日本の色に修正されが、今度はロシア政府がそれに抗議しているという。

領土問題は別にして、この「イコールアース図法」とは、従来一般的に使われている「メルカトル図法」の欠点を補うために国連が新たに推奨する地図だ。誰にもお馴染みの「メルカトル図法」は球体の地球を平面にして、緯度と経度の線を直交させる図法だから、緯度の高いカナダやグリーンランドは実際より大きく表示される。逆に赤道直下のアフリカ大陸は面積が小さく表示される。

それで各国の面積が実際と同じになるように表示できる「イコールアース図法」が提案された。楕円の上下を直線で切った小判形のような形の中に世界が表示される。

国連がこの地図を世界標準にするように推奨する決議をした。この決議案を主導したのは、アフリカ諸国だった。「欧米中心の植民地主義によって、アフリカが精神的・象徴的に小さく貶められてきた。地図を正すことは歴史的正義の実現である。」という理由だった。

この決議案に唯一反対した国がアメリカだったそうだ。「グリーンランドはアメリカ領にする」などと言って植民地主義をむき出しにしているトランプ政権のアメリカらしい。


2026年9月12日土曜日

大道絵描き

Street Artist 

最近はまったく姿を消したが、ひと昔前か、ふた昔前には「大道絵描き」をよく見かけた。道端で絵を描いて、その場で売って儲ける商売だった。素早い筆さばきでスラスラと5分くらいで描きあげる。どんな風景を描いても、アングルや構図が同じで、決まったパターンで描く。だから早描きができるが、絵画としての価値はまったくない。

日本ではいなくなった大道絵描きだが、パリのモンマルトルには今でもたくさんの絵描きが商売をしている。観光客の土産用の観光絵葉書的な絵でちっとも面白くない。

ロンドンにも大道絵描きがいて、道路の上にチョークで絵を描いて、”投げ銭”で小銭を稼いでいる。歩道に描くから「Pavement Artist」と呼ばれる。映画「メリーポピンズ」にそれが出てきた。メリーポピンズがその絵の上に乗ると、絵の世界に入ってしまう。やがて雨が降って絵が消えてしまうと、メリーポピンズは現実の世界に戻ってしまうというファンタジックな絵だった。

アメリカの現代絵画のバスキアは、地下鉄の駅や街の中の建物の壁などに絵を描いたから、一種の大道絵描きといえるだろう。映画「バスキア」で彼の生涯を描いていたが、表現主義的な激しい絵を描いた。しかし彼は美大で絵画の基礎を学んだ人なので、大道絵描き的な絵とは違う。人種差別などへの社会批判を込めているメッセージ性の強い絵だ。

ストリート・アーチストのバンクシーも街の中のいろいろな場所に描くが、バスキアはその ”はしり” だったといえる。

2026年9月11日金曜日

「キャンティ」

 Chianti

イタリアのワイン「キャンティ」のボトルが好きで、よく描いた。




2026年9月9日水曜日

映画「アイアン・ホース」

The Iron Horse

「大統領とハリウッド」(村田晃嗣)という本は、大統領を中心に、アメリカ政治と映画の相互作用の歴史をたどった本だが、その中で面白いことを言っている。ハリウッドは各時代の大統領を題材にした映画を作ってきたが、トランプ大統領を描いた映画だけは登場していない。その理由は、トランプ自身の言うことが、奇抜で面白いエンターテインメントになっているから、あえて映画を作る気にならないからだという。

確かにこの本がいうとおり、トランプの言動はどんなコメディ映画よりも面白い。例えばトランプが最近発表した歴代大統領のランキングがある。トランプ自身が最高ランクの「The Greatest」になっていて、その次にリンカーンやワシントンの「Great」が続き、オバマやバイデンは最下位の「Failuer」になっている。これをジョークでなく、本気でやっているのだから、面白すぎて、ハリウッドの人たちもトランプの映画を作る気にならないのはわかる。

同書によれば、歴代大統領の中で最も多く映画が作られた大統領は、リンカーンだという。もちろん黒人奴隷制を廃止して南北アメリカを統一した偉大な大統領だからだが、そのなかで、「アイアン・ホース」はリンカーが登場する名作のひとつだ。この映画は、1924年の白黒サイレント映画だが、後に西武劇の巨匠になるジョン・フォード監督の傑作として有名だ。 

映画の冒頭で、「アメリカは南北戦争で南北に分断されていたが、ミシシッピ川やロッキー山脈で東西にも分断されていた」と字幕が出る。そしてリンカーン大統領がアメリカ大陸横断鉄道建設の命令をする大統領令に署名するシーンから始まる。黒人奴隷制度を廃止して南北アメリカを統一したリンカーンが、鉄道建設によってアメリカの東西も統一した偉業を讃える映画だ。

この映画の全編を YOUTUBE 動画で見ることができる→
https://www.youtube.com/watch?v=TV2YM7VHFKA


マーチン・ジョンソン・ヒーデ の絵画

Martin Johnson Heade

 マーチン・ジョンソン・ヒーデ は、19 世紀アメリカの画家だが、日本ではあまり知られていない。身近な田園の風景を、季節や天候や時間帯によって変わる「光」を描いた。その空気感の表現が見事で、ノスタルジックな郷愁の気分を誘う。


川で魚をとっているのか、男が小さなボートに乗っている。まわりの畑には積みわらが並んでいる。太陽はモヤで霞んでいて、光は柔らかい。


日没直後のマジックアワーの田園を描いている。空は微妙な色で輝いている。その色が水面に美しく反映している。手前で男が釣りをしている。夕暮れの懐かしい雰囲気を誘う。



日没直前の残照。あたりは暗いが、空はまだほの明るい。



夏の晴れた日の午後の風景。入道雲がくっきりと現れた。。



空が曇っていたが、突然雨が降り出した。遠くの方はまだ雲の切れ目があり、そこだけはまだ晴れている。