2026年8月15日土曜日

「ランダム性」 PK戦のゴールキーパー

Randomness

昨日書いたように「知性はバイアスでできている」という本は、人間の推論の方法が「賢さ」と「愚かさ」の両面を持っていることを論じている。それをたくさんの具体的な事例をあげて解説している。そのなかから一例を紹介する。


壺の中にたくさんのビー玉が入っている。その中に赤い色のビー玉が何%あるかを調べろと言われたとする。すると壺に手を突っ込んで 一掴みのビー玉を取り出して赤い色の%を調べる。しかしこれはあくまで近似値であって完全な正解ではない。もっと完全を目指そうとすると、何度も同じことを繰り返して、その都度の赤の%の平均値を出すとだんだん正解に近づいていく。しかしそんな手間ひまをかける人はほとんどいない。

これは「サンプリング」による調査であり、全数を数える労力を省く上手い方法だ。同じことが例えば世論調査に応用される。「内閣支持率は何%か」を調べるとき、調査対象にするのはたいていわずか1000人ぐらいで、その答えはあくまで近似値だ。しかし人口1億人全員の声を聞こうとすると膨大な時間と費用がかかるからそんなことはしない。

この時重要なことがサンプルの「ランダム性」だ。サンプル1000人の性別や年齢や職業などが偏っていると正しい答えが得られない。だから調査対象を選ぶ時、乱数を使ったりして完全な「ランダム性」を保つようにする。

他にも「ランダム性」を利用するのが合理的な場合がある。サッカーの PK戦で、ゴールキーパーが右か左かどちらに跳ぼうかと考える時、キッカーの癖を考えてもが意味がない。キッカーは自分の癖を読まれているとわかれば、裏を描くかもしれないし、裏をかくことを気づかれていると思えば裏の裏をかくかもしれない。だからどの方向を選んでも勝つ確率は同じだ。だからキーパーもキッカーも自分の行動には規則性がなく「ランダムな行動」をとると相手に思わせて、そのとうり行動するのが最善の策になる。これは「戦略的ランダム性」と呼ばれる。

この戦略は政治の世界でも応用される。最近、台湾有事になったらアメリカ軍は出動するかが話題になる。これに対してアメリカ政府は意図的にあいまいな態度をとってきた。トランプ大統領は外交政策について「我々は予測不能でなければいけない。我々は予測不能になる。」と言った。まさに PK戦のゴールキーパーと同じ「戦略的ランダム性」で、それが最大の抑止力になる。


2026年8月14日金曜日

「知性はバイアスでできている」

 「What Makes Us Smart」

「バイアス」といえば普通は、「偏り」や「思い込み」などのように、人間が間違った判断をするものとして悪者扱いされる。しかしこの本は、人間の知性とはそもそもバイアスでできているという考え方を主張している。

動物も人間も、食べ物を探したり、外敵から身を守ったりするために視覚や聴覚によって得られる外部からの情報を集めて、それに基づいて物事を判断する。しかしそれらの情報はまわりの世界にある膨大な情報のごく一部でしかない。

人間はその情報の少なさを脳の力で補う。例えば「あの時はこうだったから今度もそうだろう」などと過去の記憶を頼りにしたりする。しかしそれが往々にして「思い込み」などの間違いを引き起こす。

しかし一方で、そういう脳の力を借りずに少ない情報だけで正解を求めようとすると、あれこれ考えている間に外敵に喰われてしまうかもしれない。つまり「記憶」や「知識」は、いちいち最初から考えなくとも効率的に物事を判断するための力になる。

このように人間が得られるデータは限られていて、世界を不完全にしか把握できない。だから脳は観察を事前知識と組み合わせることで、正解を知ろうとする。しかし人間の脳はコンピュータと違って、データ量も、計算力も限界がある。それを解決するために、脳はさまざまな戦略を持っている。「バイアス」もそのひとつだ。このように人間の「賢さ」と「愚かさ」の本質をこの本は追求している。


2026年8月13日木曜日

横浜・根岸の工場地帯

Oil Refinery in Yokohama

自宅からそう遠くない横浜・根岸には巨大な工場が立ち並んでいて、よくその辺りを散歩する。その中心が、海岸べりにある日本一の石油精製工場。中東からの石油タンカーが接岸する専用の埠頭があり、タンカーから工場へ直接パイプによって原油が送られる。

精製工場には無数のタンクが並んでいる。
ここで原油はガソリンやナフサや軽油などに分けられる。

石油精製工場の隣には発電量日本一の火力発電所がある。
精製工場のすぐ隣だから、燃料の石油を直接パイプで供給できて効率がいい。

精製工場の周辺には石油やナフサなどを使う石油化学工業の工場が
並んでいる。これはセメント工場。周りにはタンクローリーが走り回っている。

そういう工場のさらに周辺には、小さい町工場の区域がある。かなり
広い範囲にわたって町工場が並んでいる。(雨の日のスケッチ)

JR根岸駅は乗降客の少ない駅だが、代わりに石油運搬のタンク車がズラリと
並んでいる。精製工場からの専用線と繋がっている。(駅ホームからの眺め)

2026年8月12日水曜日

バイアスのいろいろ

 Cognitive Bias

「バイアスの心理学」という本に、80 種類以上のいろいろなバイアスについて解説している。それらすべてで、認知心理学者による実証実験が紹介されていてとても面白い。そのなかから少しだけ紹介。


「ラベリング効果」

2グループに分けた被験者に左の図形を見せる。Aグループには「これは砂時計に似た図形です」と伝える。Bグループには「これはテーブルに似た図形です」と伝える。

そして1週間後に、その図形を思い出して描くようにいう。するとAグループは砂時計のような形を描き、Bグループはテーブルのような形を描いた。

人間は曖昧な図形が「砂時計」とか「テーブル」とかラベル付けされるとその知識に沿うように覚えてしまう。これは認知バイアスのひとつで、「ラベリング効果」という。

「ラベリング効果」は政治の世界で日常的に利用されている。「ラベルづけ」は日本語の「レッテル貼り」と同じで、「レッテル貼り」によって敵対する政治家のイメージを悪くしようとする。例えば「彼は極右政治家だ」などとラベリング(レッテル貼り)して、人々に偏見を植え付けようとする。


「アンカリング効果」

被験者を2グループに分けて質問をする。Aグループには「国連加盟国のうち、アフリカ諸国は何%だと思いますか?  65%より多いと思いますか?」と聞く。すると「 65%より少なそうだから 45% くらいかな」と答える。

一方 Bグループには「国連加盟国のうち、アフリカ諸国は何%だと思いますか?  10%より多いと思いますか?」と聞く。すると「 10%より多そうだから 25%くらいかな」と答える。

正解は 30%で、両グループともはずれている。最初に数値を示されると、それを目安にして物事を判断してしまう。これは「アンカリング効果」と呼ばれる。これは TVショッピングのCM などでしょっちゅう目にする。「本来 ¥3000 の商品を特別に ¥2000 で提供します」 と言われると ¥3000 に何の根拠がなくても安く感じてしまう。


「同調バイアス」

線の長さを比較する図表を見せて、「標準線と同じ長さの線は ABC のうちどれですか?」と聞いて、複数の回答者に答えさせる。ところが被験者以外はサクラで、全員「B」と答える。しかし被験者は  「C 」ではと思いつつも「B」と答えてしまう。

このようにまわりの意見に影響されて、周囲に合わせた行動とるのを「同調バイアス」という。物事の正しさや価値を自分で判断できなくなる。

例えば職場で、自分が仕事が終わっても、みんなはまだ残業しているので帰れないとか、飲み会に行きたくないが、和を乱すのを気にして参加する・・・など「同調バイアス」はしょっちゅう目にする。


2026年8月11日火曜日

SNS の認知バイアス

Cognitive Bias 

SNS などのネットの情報を受け取ったとき、「バイアスのかかった」判断をしてしまうことが多い。自分のなかにある、「偏り」や「思い込み」や「先入観」などによって、無意識のうちに判断が歪められてしまう。

コロナの時のワクチンに関するニセ情報をたくさんの人が信じてしまったのはいい例だった。「ワクチンを打つと妊娠できなくなる」とか「ワクチンより安全な⚪︎⚪︎の薬を飲む方がいい」などといった情報が SNS に溢れた。発信者は「⚪︎⚪︎大学医学部教授」などと名乗って、専門用語を並べたもっともらしい情報だったが、実は薬を売って金儲けをするためだった。

これは肩書きや権威のある人の意見は正しいと思ってしまう「権威バイアス」と呼ばれる。またこの情報が拡散されると、同じ情報に繰り返し接することになる。すると何度も接する情報は真実だと思ってしまう「真実性の錯覚」というバイアスに陥る。また情報が正しいと信じると、それとは違う情報には目をそむけ、同じような情報だけを集める「確証バイアス」がある。さらには「敵対的メディア認知」というバイアスがある。SNS の情報をTVが伝えないのはマスコミの報道が偏っているからだと考えてしまう。このようにコロナの例だけでもいろいろな種類のバイアスが影響していた。

「バイアスの心理学」(Newton 別冊)という本は、このような「認知バイアス」を 80 種類以上にわたって詳しい解説をしている。バイアス思考に陥らないために役に立つ。


2026年8月10日月曜日

映画「アルジャーノンに花束を」

 Flowers for Algernon

「アルジャーノンに花束を」という映画があった。主人公の男は子供なみの知能しかない知的障害だが、脳外科医から脳の手術を勧められる。手術は成功し、超難問の数学がスラスラと解けるようになったり、何カ国もの言葉をしゃべるようになったりと知能が驚異的に高まる・・・

この映画はSF小説をもとに、1968年に映画化された。まだAI (人工知能)が無かった時代だが、映画の脳外科手術は今だったらAI に相当する。「知性」とは?「人間」とは? を問いかけている映画だ。

しかしその脳外科手術の効果は、だんだん減衰していくことが分かってくる。医者は再手術を勧めるが、主人公はそれを断り、元の自分に戻ることを決める・・・

その理由は、知識や思考力は完璧になったが、他者への共感や思いやりといった「人間的な感情」が薄れていくことに気づいたからだ。映画は現代の ”AIの恐ろしさ” を予見していたかのようだ。ラストで、元の知能に戻った主人公は、いっしょに手術をして先に死んでしまった実験用マウスの「アルジャーノン」の墓にそっと花束をたむける。


2026年8月9日日曜日

ロールス・ロイス

 Rolls-Royce

しばらく前だが、横浜・山手を歩いていたら、道路にロールス・ロイスがさりげなく駐車していた。エレガントな姿に見とれてしまったが、写真に撮って、後で絵にしてみた。調べてみたら、さだかではないが、1950 年代の「シルバーレイス」というモデルらしい。ナンバーが「11-22」で、「いい夫婦」と読めるので、近くの結婚式場の新婚さん送迎用の車に違いない。