2019年4月29日月曜日

魚眼レンズで撮る

Fisheye lens

あちこち歩きまわって魚眼レンズを試している。普通の広角レンズでは撮れない写真をねらうのだが、意外と難しい。スケールの大きい被写体を、思い切り接近して撮ると、魚眼の特徴を活かせるようだ。







2019年4月28日日曜日

2019 現代パステル協会展

Modern Pastel Society Exhibition

2019 年「現代パステル協会展」が今年も始まった。
東京都美術館、5 / 2  (その後、大阪巡回展)



2019年4月26日金曜日

遠藤彰子の魚眼的風景

Akiko Endo

遠藤彰子の「光景」は、広場で子供たちが遊んでいて、大人がまわりの建物から眺めている。描かれている個々のパーツは日常的なのに、絵全体は非現実的に感じる。真下から遠景まで、右の建物から左の建物まで、目では見えない広い視角で描かれている。そして建物が湾曲しているのも魚眼レンズの見え方だ。

「私の街」は、通路や階段が建物と絡み合っていて、中心は深い谷底になっている。ねじれたり反転したりしている、現実にありえない迷宮のような街を描いている。


2作に共通しているのは、すり鉢状の空間を描いていて、それを真下から向こう側まで、すり鉢の全周を視界に入れていること。これは魚眼の視覚でないと描けない。

2019年4月24日水曜日

魚眼レンズの遠近法 球面投影

Fisheye lens & perspective

魚眼レンズの写真で、なぜ直線が湾曲して写るか、調べてみた。

絵画は平面に投影した像を描くし、写真も同じ。これを「平面投影」というが、魚眼レンズの像は球面に投影した像で「球面投影」と呼ばれる。これはプラネタリウムと同じ原理。球面に投影された直線は球面に沿うので、湾曲した曲線になる。

図と写真は、平面投影と球面投影の比較。(写真は普通のレンズと魚眼レンズで同位置から撮影したもの。)

魚眼写真は、周辺に行くほど激しく曲がり、画面中心付近は湾曲の度合いが少ない。その理由は、球面の中心付近(見ている人にとっての)はほぼ平面に近いので、平面透視と変わらないから、ということがこの図からわかる。
(図は、黒田正巳「空間を描く遠近法」より)
ついでだが、レオナルド・ダ・ヴィンチの遠近法の研究で「透視図の逆説」というのがあるそうだ。図のように、同じ大きさの3つの円(a,b,c)が並んでいるのを、平面投影(de)すると、外側の円は遠いのに、中心の円より大きく投影されてしまう。しかし球面投影(fg)だと同じ大きさに写る。それをダ・ヴィンチは「逆説」と言っている。(黒田正巳「空間を描く遠近法」より) だから正しいと思っている通常の写真は実は歪んでいて、魚眼レンズの写真の方が正しいことになる。しかし同時にダ・ヴィンチは、視距離が遠くなれば、この誤差はほとんど無くなるから問題ないとも言っているそうだ。上の二つの写真でも、画面中央の遠景では、両者の差はない。

2019年4月22日月曜日

魚眼レンズの視角と視覚

Fisheye lens

魚眼レンズを手に入れたので使用テストをしている。普通のレンズでは撮らないような、魚眼の効果を発揮できる被写体とカメラアングルを探す面白さがある。うまくいくと肉眼ではできない視覚体験ができる。


上下左右すべての視角が 180 度に近いのが魚眼だから、このような囲まれた空間は特徴を活かせる。向かい合った両側のフロア、天井と床など、すべてが画面に入り、空間の大きさを表現できる。
空間の中心に立ってカメラを真上に向けると、全周が視界に入る。そして普通のレンズで撮れる範囲を超えた周辺部になるほど直線が湾曲する。
肉眼では、視線を動かさない限り、至近距離から高層ビルの一階から最上階までを同時に見ることはできないが、魚眼を上に向けて撮ると可能になる。
こんな風景も。左下で道路が湾曲して写っている。

2019年4月20日土曜日

「古い機械」氷川丸のエンジン



古い機械を描くのが、このところのマイブームだが、氷川丸を見学した時、そのエンジンの迫力がすごくて、モチーフにしたくなった。90 年も前に建造された歴史的な遺産で、重要文化財になっている。ビルの3階分くらいある巨大な機械のほんの一部を切り取って、クローズアップにした。現物はきれいに保存されているが、古い機械へのオマージュとして、絵では錆びさせてもらった。

「古い機械」  アクリル、ボード、P40号
"Old Machine"  Acrylic on board with a thick primer、100cm × 73cm


砂目入りのモデリング・ペースト(pumice)で、厚塗りの荒い下地を作った上に、極端なドライ・ブラシでアクリル絵具を擦りつけるように乗せて、錆びた鉄のザラザラ感を出した。

2019年4月18日木曜日

円の遠近法

Perspective of the circle

遠近法が確立されていない時代の絵だが、馬車の車輪がおかしい。車輪の楕円が立っているが、正しくは下のように、車軸と、楕円の長軸は 90 度で直交しなければならない。
(図は  "How To Use Creative Perspective" より)

食器や花瓶など丸いものが登場することが多い静物画では、楕円が狂っていると途端にウソっぽくなってしまうが、円の遠近法を知っていれば、狂いに気づくことができる。

いい例を2つ。ワイエスの壁のバケツの楕円がピタッと決まっている。シャルダンの立てかけた鍋も見事。どちらも回転体の回転軸と楕円の長軸が完璧に 90 度で直交している。



2019年4月15日月曜日

坂道の風景の描き方

Perspective of up hill and down

ピサロの道の風景画はどれも魅力的だが、この雪の坂道もいい。これをなぜ下りの坂道に感じるかは作図してみると分かる。水平な建物と傾斜した道路の消失点がずれている。そして二つの消失点は視点を通る同じ垂直線上に乗っている。この正確なパースのおかげで、坂道の雰囲気が表現されている。

坂道の雰囲気がよく出ているスケッチ。この場合はもっと複雑で、坂の傾斜角度が3回変化しているので、道路の消失点が3つ出来ている。傾きの違う場所に駐車している2台のバンの傾きの違いもきちんと描かれている。坂の風景の雰囲気を出すには、正確なパースが命なことが分かる。
(図は、Watson  "How To Use Creative Perspective"より)

2019年4月12日金曜日

道路や線路の風景画

Perspective of road or railroad

道路や線路の絵は、どの位置から、どの方向を見て描くかで随分表情が変わってくる。

今では普通だが、道路を主題にして、しかもこのような構図で描いたのは、17 世紀オランダの画家ホッベマのこの絵が最初だと言われている。道路の中央に立って、まっすぐ正面を見ているので、消失点は画面中央にあり、道路は左右対称になっている。

印象派のピサロは道路の絵をたくさん描いたが、これは道路の外に立って描いている。消失点は画面右端にあり、道路は画面を横切っている。道路そのものよりも、立ち話している人物の方に注意が向く構図になっている。

やはりピサロの絵で、これは車道と歩道の境目に立って描いている。消失点が中央よりも左にずれるので、右側の家がよく見える構図になっている。

この3つの違いを、遠近法的に理解できる図があった。画家とキャンバスと風景の位置関係で、どう見え方が変わるかを線路の風景を例に説明していてわかりやすい。
(Watson "How To Use Creative Perspective")

2019年4月10日水曜日

凸面鏡の自画像  パルミジャニーノとエッシャー

Convex mirror self-portrait, Parmigianino & Escher

16 世紀のパルミジャニーノのいちばん有名な作品が「凸面鏡の自画像」。スプーンの裏側などの映りで凸面鏡の効果は普段から見ているのに、誰もそこに意識がいっていなかったから、この絵に人々は驚いたという。今でいえば、道路のカーブミラーや、車のフェンダーミラーの像で風景画を描いたようなものだろう。

こういう「見ているのに見えていない」無意識の知覚を表に出した絵も「幻想絵画」と呼ばれるひとつだが、その現代版がエッシャーで、「写像球体を持つ手」で金属の球に映った自画像を描いている。

視覚 180 度くらいの超広角なので、室内の直線が曲がっているが、同じ効果は魚眼レンズで撮った写真でも見ることができる。魚眼レンズを買っていろいろ試してみたくなる。

2019年4月8日月曜日

水面の反映の遠近法

Perspective of water & reflection

水辺の風景を描くとき、建物などの水面への反射を遠近法的に正しく描くことは結構難しい。もっともこのモネの「ポールマリーの洪水」のような場合は簡単で、建物の足元が直接水面に接しているので、そのまま上下対称に反転すればいい。

このワイエスの絵のような場合は、建物と水面の間に土手があるから、単純に上下反転するわけにはいかない。とくにこの場合は多分作った風景なので、実景を見て描くことができないからなおさら難しい。


ある雑誌広告のイラストだが、遠近法的におかしいので間違いを正す作図をしたことがある。これも土手が間にあって邪魔しているが、水面を陸の中まで延長して、その仮想水面に対して上下反転する。そして建物と反映の消失点を一致させる。絵を描くときにいちいちこんな作図はしないが、知っているとこのイラストのような大間違いはしないですむ。


2019年4月5日金曜日

遠藤彰子の「街」

遠藤彰子は、迷宮のように入り組んだ都会の風景を幻想的に描いているが、「街」を横浜美術館の常設展で見ることができる。この絵のように風景を見るには視線を上下左右に動かさなければならない。人間の視野角の限界を超えている魚眼レンズの見え方で、幻想的に感じるのは、そのためだと思う。


2019年4月3日水曜日

「フェルメールのカメラ ー 光と空間の謎を解く」

"Vermeer's Camera"

ロンドン大学建築学科教授のステッドマンという人が、フェルメールの絵に描かれた空間を遠近法の知識をフルに使って解明していくという、推理小説さながらの面白い本。最近某「視覚心理学者」の、フェルメールは「現実にあり得ない空間を描いている」という、とんでもない説が出回っている( 三浦佳世「視覚心理学が明かす名画の秘密」)ので、前にも書いたことがあるが、この本をもう一度紹介したい。

フェルメールの室内画は、自宅のアトリエで描かれたと言われているが、それはどんな部屋だったのかを実際に復元してみようというプロジェクトで、当時の写真はもちろん資料もないから、描かれた絵だけを手掛かりに解明していく。

遠近法が正しく描かれた絵は、物の寸法の比率を正確に表現しているはずだから、逆に絵から部屋の形を割り出していける。その結果、部屋の形がわかり、図面を描いて、模型を作ることができた。そして模型をフェルメールの絵と同じ視点から写真を撮る。するとドンピシャで絵と一致していた。フェルメールの遠近法がいかに正確だったかを科学的に証明している。

左が模型の写真で、右が実際のフェルメールの絵。驚くほどぴったり一致している。

2019年4月1日月曜日

平成最後の作品「メカニズム」

完成、のつもりでいたが、あちこち手を加えて今度こそ完成に。自分としては「平成」最後の作品で、あとは「〇〇」最初の展覧会出品へ。(〇〇は本日 4 / 1、2時間後に発表)
「MECHANISM」  Pastel on board primed with pumice、100cm × 80cm