2018年5月30日水曜日

工場のタンク


工場巡りしていると、セメント工場や化学工場などのタンクに造形の面白いものが多い。





2018年5月28日月曜日

狐の嫁入り

A day of sun shower

太陽が出ているのに雨が降る天気雨を「狐の嫁入り」という面白い言い方をする。奇妙な天気が、狐に化かされているようだということらしい。そんな日は、普段は平凡な景色も絵のような空気感に包まれる。



2018年5月26日土曜日

「ターナー展」(その4:"インスタ映え"な風景)

Turner

今やっている「ターナー展」にあった絵で、 アルプスの険しい山道のゴツゴツした岩と目も眩むような深い谷が大迫力だ。

インスタ映えする写真を撮りたくて旅に行く。ネットの写真を見て自分も行ってみたいと思う。これと同じことが昔からあったそうだ。 18 世紀イギリスでは「グランドツアー」という海外旅行が大流行で、旅行ガイドブックに載っている風景画の本物を見たくて旅に出る。目的地で風景を見て、なるほど絵の通りだわいと満足するし、画家は写真はまだ無いから絵に描く。「ピクチャレスクな風景」とは絵のように美しい風景のことで、そういう風景を描いた絵は「ピクチャレスク絵画」と呼ばれた。ターナーがアルプスやイタリアに旅をして絵を描いたのもそれだった。(参考:「グランドツアー」)

2018年5月24日木曜日

「ターナー展」(その3 : クロード・グラス)

Claude Glass,  Claude Lorrain and Turner

誰でも経験があると思うが、窓ガラスに映った景色が実景よりも良く見えることがよくある。これを応用した「クロード・グラス」という絵描き用の道具が昔あったそうだ。小さなガラスの凸面鏡で、絵を描く場所でくるりと後ろを向いてこの鏡で風景を見ながら描く。細部の形や色にとらわれずにすむので、対象の光の明暗を大づかみに把握できた。

「クロード・グラス」の名前のいわれは、風景画の始祖クロード・ロランから来ている。クロード・ロランは古代ローマ建築をモチーフにして光の明暗を劇的に描いた。それがピクチャレスク絵画の理想風景とされていたので、ロランのように描きたい画家たちはクロード・グラスを持って、あちこちへ出かけたそうだ。

ロランから200 年くらい後のターナーもロランに憧れていた。さすがにクロード・グラスは使わなかっただろうが、古い建築を探して歩き、それをもとに描いた。この絵など、モチーフ、構図、光、などすべての点でロランの影響を受けている。
( 参考:「ターナー」「廃墟の美学」)
(「ターナー  風景の詩」展、
 損保ジャパン興亜美術館、〜7/1)


2018年5月22日火曜日

ターナー展(その2)

Turner

ターナー展で、このような廃墟の風景画がたくさん観れる。中世の城とか、朽ち果てた修道院などをさかんに描いている。ターナーはこういうモチーフを探して旅をしたという。



ターナーの時代、「ピクチャレスク」という言葉が生まれたが、「絵のように美しい風景」のことで、そういう風景を描いた絵もピクチャレスク絵画と呼ばれた。絵をピクチャレスクにする条件は「粗さ」と「ゴツゴツ、ギザギザ」だったそうで、当時の本にこんな説明図があったという。下がピクチャレスクな絵で、上の絵と比較している。なだらかではなくゴツゴツした岩肌の山、整然とした建物ではなく崩れかけた廃墟、などがある風景だ。ターナーの絵がそのまま当てはまる。(「廃墟の美学」より)



2018年5月20日日曜日

ターナー展

Exhibition "Turner and the Poetics of Landscape"

ターナーの比較的若い頃の小品が多く、水彩、グァッシュ、エッチングなど多彩。展示の第1番目が 17 才の時に初めて描いたという絵だが、良すぎて驚く。他にも詩的で劇的なターナーを堪能できる。

(「ターナー  風景の詩」展、損保ジャパン興亜美術館、〜7/1)


ショップで「TURNER & THE SEA」というターナーの海景だけを集めた画集を購入。こちらも楽しめる。

2018年5月18日金曜日

夕日が月のような日

Sunset

夕日が月のように柔かいので直視してもまぶしくない。こういう日は一年の中でもめったにない。大気中の水分が気温の低下で細かい水滴になり、それがフィルターのような効果になるためらしい。(200 mm 望遠レンズで撮影)


2018年5月16日水曜日

「この世の終わり」絵画

Tsunami and apocalypse picture

レオナルド・ダ・ヴィンチは、この「没落の最後の光景」のような大洪水をたくさん描いた。聖書にある、神が怒り大洪水を起こして人間を滅ぼすというこの世の終わりの恐ろしい光景で、ダ・ヴィンチでさえも終末を恐れていたという。このような終末絵画は西洋絵画のイメージの源泉として、ずっと描かれ続けてきたが、洪水や津波がもっと多い日本にはなぜこういう絵が無いのだろう。

レジス・ドブレというフランスの思想家の「大惨事と終末論」という本を読んでいたら、津波や原発事故などの大惨事に対する日本人の態度について触れていて、終末絵画が日本に無い理由が分かった気がした。

『試練における多くの日本人の平静さと我慢強さは、あらゆるものの儚さや移ろいやすさに対する仏教的感情によるものである。日本人ならほんの幼い頃から知っていること、すなわち、みずからの国土が不滅ではなく、生が移ろいやすく、どんな幸福も儚く、木造の神社のように二十年ごとに破壊され再建される。そして、人間は残酷な神の玩具でしかないということを改めて思い出すまでもなく、当然のことのように廃墟から復活へとすべてが進んだ。』 

さらに著者は、石原慎太郎元都知事が震災を「天罰だ」と言って、それは西洋人には普通の言い方だったが、日本人からは大批判を浴びたことにも触れている。日本人にとってはどんな壊滅的な大惨事も特別のことではなく、そこに神の怒りを感じたり、天罰が下ってこの世が終わる、といった感じ方は無いということを言っている。

2018年5月14日月曜日

彩象展



彩象展は、横浜・神奈川が中心のローカル公募展。今回は今までよりも大きな賞(横浜市長賞)をもらうことができた。  \(^o^)/  
(横浜市民ギャラリーにて、 明日 5 / 15  〜 5 / 20  )

「海辺の廃屋」 パステル 30 号

2018年5月12日土曜日

昭和のデザイン、氷川丸のポスター


Art Deco poster of '30s

氷川丸は山下公園に保存されているが、関連資料が「日本郵船歴史博物館」に展示されている。船内インテリアのデザインスケッチなどもあるが、招聘したフランスのデザイナーによるもので当時(氷川丸は昭和5年建造)流行のアール・デコの本格的デザイン。氷川丸のポスターの展示もあり、これも昭和初期の雰囲気がたっぷりだが・・・



下は同時代のフランスの観光ポスターで、アール・デコの傑作として今でもデザイン史上有名な作品。氷川丸のはこれの模倣と言うべきか、影響を受けたと言うべきか。よく見ると本家の方は完全に様式化されているのに対して、氷川丸の方は写実的な雰囲気が残っていてアール・デコスタイルに成りきっていないようだ。


2018年5月10日木曜日

絵の中の「夜のカフェ」

 Night cafe

ゴッホの「夜のカフェテラス」の照明は当時新しかった電灯なのだろう。ゴッホは『夜は昼よりも明るく活き活きとしていて、豊かに彩られている』と言ったそうで、夜の明るさが近代的な豊かさの象徴だったようだ。しかし空には星が輝いているので今の都会に比べたらずっと暗かったはずだ。

エドワード・ホッパーの「深夜の人たち」では、暗くなった街でこのカフェだけがこうこうと明るい。これが最後らしい客と、片付けをしている店員の姿から、長い一日がやっと終ったというような疲労感が漂っている。ゴッホの言う「豊かに彩られた」感のない現代の夜だ。ホッパーは夜の照明の明るさで都会の倦怠感や孤独感を描くのが上手だった。


2018年5月8日火曜日

「認知症」の映画ベスト3

Dementia movies

後期高齢者の免許証更新時に義務付けられている「認知機能検査」を受けた。それで認知症がテーマの映画を取り上げる気になった。原題が「Still Alice」や「Lovely,  still」で、still(今までのまま)が使われているように、認知症になっても変わらない愛がテーマになっている。特に高齢者の方におすすめ。


「アリスのままで」
若年性アルツハイマーを発症した大学教授の女性アリスは少しずつ言葉を失っていく。少しでも長く自分のままでいたいと願うのだが、自分が壊れていくのが止められない。最後にやっとかすかに発した言葉は「LOVE」だった。

「やさしい嘘と贈り物」
毎日ぶらぶらしているお年寄りが偶然出会った可愛いおばあちゃんが好きになってしまい、生きがいを取り戻す。ところが、実は彼女は自分の妻なのだ。というとてもハートウォーミングな映画。

「きみに読む物語」
介護施設で暮らす老いた妻に夫が毎日繰り返し物語を読んで聞かせる。恋人同士だった頃のラブレターの数々なのだが、妻はそれが自分たちの物語だということが分からない。手紙に重なる若い頃の回想シーンが切ない。






2018年5月6日日曜日

モンドリアンの具象から抽象へ

Mondrian

モンドリアンといえば抽象絵画の元祖だが、初めは普通に具象で、例えばリンゴの樹を写実的に描いていた。やがて『美の対象はいつも対象の特有な外観によって妨げられる。だからあらゆる具象から対象を抽象化する必要があるのだ。』と言うようになったそうだ。目の前にある樹の美しさを描くなら写実でいいが、樹すべてに普遍の美しさを描こうとすると、目の前の樹の美しさは邪魔になるというわけだ。なぜ具象から抽象へなのかがとてもわかりやすい。

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約20年にわたるこのような道のりを経て、最終的にこの有名な作品(1930年)のような究極の抽象に到達した。

2018年5月4日金曜日

ルーブル美術館をデザインした廃墟の画家 ユベール・ロベール

Hubert Robert

今、東京都美術館でやっているプーシキン美術館展にユベール・ロベールの作品が出ている。18 世紀、ロベールは「廃墟の画家」といわれ、ローマ時代の遺跡をたくさん描いたが、すべて空想上の創作で、実際にあった風景ではない。廃墟の寂しさはなく、古代への憧れを描いた絵だ。

ロベールは建築や庭園のデザインもした。フランス革命後にルーブルの王宮が市民に解放され、その中にギャラリーを作るというプロジェクトにも関わった。ガラスの天窓があるアーチ天井の今のルーブル美術館(右)の始まりだ。その完成予想図(下左)の絵があるが、面白いのは、そのルーブルが千年後に廃墟となった姿(下右)を同時に描いている。瓦礫のように残った彫刻を画家が模写している光景で、廃墟になってもなお続く芸術の永遠性を表現している。


またパリで火事などがあると、報道カメラマン的に現場の光景(下左)や、燃えた建物の取り壊しの光景(下右)を描いている。いわば廃墟ができる過程をリアルタイムで描いているようなもので、やはり「廃墟の画家」だ。
( Photo : "Futures & Ruins, Eighteenth-Century Paris and the Art of Hubert Robert" )


2018年5月2日水曜日

物議を醸した映画 No1「最後の誘惑」

"The 50 most controversial movies ever" and the movie "The Last Temptation of Christ"

アメリカの映画サイトに「映画史上最も物議を醸した映画 50 本」という面白い記事があった。トップ5は
   1位「最後の誘惑」
   2位「意思の勝利」
   3位「ソドムの市」
   4位「国民の創生」
   5位「時計仕掛けのオレンジ」
激しい論争が起きたり上映禁止になったことで有名な映画ばかりで、暴力、性、差別、政治、宗教、などのテーマが多い。

そのなかでイエス・キリストの生涯を描いた宗教映画の「最後の誘惑」が第1位になったのは興味深い。十字架にかけられたイエスが十字架から降り、普通の人間として生きるよう悪魔から誘惑されて、女性と結婚して家庭を持つというストーリーが、アメリカ人の猛反発を受ける。実際どんな「物議」が起きたのか「アメリカ映画とキリスト教」という本に詳しく説明されている。

キリスト教保守派や福音派の宗教団体を中心に激しい抗議運動が展開され、映画館の前で入場妨害の実力行使をしたり、爆破事件さえ起きたという。その結果、映画は興行的に失敗し、スコセッシ監督は二流監督扱いされてしまう。

これらの保守的な宗教団体の信者はアメリカ人口の4分の1もいて、数を背景に政治にも大きな影響力を持っている。大統領選挙でも票のために彼らに迎合せざるを得ない。それで思い浮かぶのは、トランプ大統領の、イスラエル大使館をエルサレムに移すとか、対イスラム強硬政策とか、地球気候変動は科学者のでっち上げだと言ったりとか、が全てそこにつながっていることが分かる。だから映画の一本くらい潰すのは簡単なことなのだろう。