2016年4月29日金曜日

あるコンビニのトイレにて



この間コンビニのトイレでこんな光景を見かけた。張り紙に「レバー大、下向きで」とあるが意味不明だ。

意味は分からないが、店主さんの親切心は分かる。誰もが経験していると思うが、いつも迷うこのレバーの使い方をなんとか説明しようとしている。しかし説明の仕方が難しすぎてこうなってしまったようだ。タンク自体にも説明ステッカーが貼ってあるので、メーカーも分かりにくさを自覚していると思う。

迷うのはレバー自体のデザインが問題だからで、張り紙のせいではないだろう。Macをデザインしたノーマンが「張り紙で説明しなければ使い方の分からないデザインは落第だ」と言ったがそのいい例だと思う。

「大」の時はレバーを奥へ押すのだが、表示は「大」の矢印が手前を向いている。(回転運動なのでそうなる。)  迷う原因は、この「操作」と「表示」の矛盾にあると思う。で、頭の体操的に解決方法を考えてみたら、いい案を2〜3 通り思いついた。


2016年4月24日日曜日

ソニービルを上から眺めて



銀座の東芝ビルの跡地にできた東急プラザへ初めて入ってみた。屋上の展望台に登ったら、目の前のソニービルを上から見下ろすことができた。これは初めての経験だ。

ソニービルが完成したのは50年前の 1966年。就職したのがその1年前だったが、新入社員の初仕事が翌年完成するソニービルの完成記念ラジオのデザインだった。ビルの縮尺模型の形にするという条件が最初から与えられたので、デザインすることは何もないのだが。

建物はまだ鉄骨の状態だったが建設事務所で設計図面を見せてもらう。分厚い図面ファイルには断面図や詳細図などしかないので、あちこちの図面から必要な寸法を読み取り、それらをつなぎ合わせてビル全体の形を割り出す。それをもとにラジオ用の縮尺図面を引いた。

ビル建設と同時進行で、ラジオの金型製作など量産準備が進む間、ラジオの形がビルと合っているか心配でドキドキだった。完成して足場が外れ、ビルの形が現れた時、ほっとしたのを今でも覚えている。

2016年4月18日月曜日

「カラヴァッジョ展」と映画「カラヴァッジョ/天才画家の光と影」

Caravaggio

上野へ「カラヴァッジョ展」(国立西洋美術館、〜 6 / 12 )を観に行った。やはりすごい。そのあと DVD で映画「カラヴァッジョ/天才画家の光と影」を鑑賞。絵の制作シーンがたくさん出てくる。それが史実通りなのか映画用の創作なのかは分からないが、実物の絵を見た後ではとても本当らしく感じる。

最高傑作といわれる「聖マタイの召命」(写真右)の場面も出てくるが、この強烈な光と影の対比が生まれたエピソードが面白い。アトリエで描いているうちに寝入ってしまい、明け方ふと目をさますと、窓から差し込んだ光が絵に当たっているのを見てその劇的な効果にびっくり仰天する(写真下)。そしてその光をそのまま絵に描きこんでしまい、この絵が生まれたというストーリーだが、とても映像的なこの絵からするとありそうな話だと思える。



それで調べてみたら、この絵は上の写真の教会の中に飾られているそうで、祭壇を囲む3面の絵のうちの左側の絵がそれ。これで気がつくのは、上の天窓からの光の方向が絵に描かれた光の方向とぴったり一致していて、先の映画のシーンでの関係と同じだ。カラヴァッジョはこの教会の建築空間と絵が一体化するように初めから計算して描いたのではないか。あの光と影の表現も、この空間のほの暗さを利用して、その中から絵がドラマチックに浮かびあがることをねらったものなのだろう。

2016年4月13日水曜日

恐怖エスカレーター

Scare escalator

齢のせいで手すりなしに階段の登り降りができなくなった。エスカレーターも手すりにつかまっていないと怖い。だから最近このような駅ができ始めたのはうれしい。階段、エスカレーター、エレベーターの3つが同じ場所に並んで設置されている。高齢者も車椅子の人もベビーカーを押す母親も誰もが好きなものを選べる、というユバーサルデザインの原則に沿っている。

それで思い出すのは、池袋の「東京芸術劇場」のエスカレーターで、1階から5階まで一直線のぶっ通しで、それが吹き抜けの大空間のなかに空中に浮いたように設けられている。スキーのジャンプ台の上にいるようで足がすくむ。この建物は何度も行ったが、乗ったのは最初だけであとはごめんだった。年寄りだけでなく若い人も嫌がっていたが、この悪名高いエスカレーターはさすがに最近改修され、2分割されたうえ、位置も壁際に移動した。

それで現在の恐怖エスカレーターNo.1 の座に輝いているのは福井県にある「恐竜博物館」だそうで、行ったことはないが、確かにこれも怖そうだ。

「芸術劇場」でエスカレーターを避けてエレベーターを使おうとしたら場所が分からない。迷ったあげく奥の方の入り組んだ所にやっと見つけた。ユニバーサルデザインが盛んに言われるこの時代に、あくまで恐怖エスカレーターを使えというのが設計した建築家の言い分らしい。

製品や自動車のデザインと違って、建築は「〜先生の設計」と名前が出る。だから目立つような派手なデザインになってしまうのだろうか? ちなみに上の二つの例は、A氏とK氏で二人とも超有名な建築家だ。K氏はかつて都知事選に出て落ちた人だが、当選していたら東京中にこんな建物ができたかもしれない。(笑)




2016年4月8日金曜日

大谷石採掘場跡を見学

The underground cavern of the old mining site of Ohya Stone

宇都宮にある「大谷資料館」の大谷石の地下採掘場跡に行ってみた。地下へ降りていくと巨大な空間が次々に現れる。幻想的でしかも迫力満点。通称「地下神殿」と呼ばれるとおり、エジプトあたりの古代遺跡へでも入ったような気分になる。


周辺には地下でなく露天の採掘跡もたくさんある。山全体が大谷石のかたまりなのだが、こんな人工的な形になっているのが面白い。絵にしたくなるような風景がいっぱいある。

採掘したあとの壁面は、細かい穴のたくさん開いたざらついた肌になっている。この軽石に似た肌が大谷石の特徴で、キメがなめらかな御影石や大理石との違いだ。フランク・ロイド・ライトが帝国ホテルで全面的にこれを使ったことは有名で、ざらついたテクスチャーがアール・デコ建築特有の立体造形にぴったりマッチしている。


2016年4月2日土曜日

「カースタイリング」誌の特集記事 「ソニーデザインの原点」

Feature article of the latest "Car Styling"  magazine : "The Origin of the Sony Design"

「カースタイリング」誌の最新号(3 / 27 発売)の特集記事を執筆した。久々に趣味でなく本業に関する仕事をした。前々職での自分の経験をもとにして、企業デザインの始まりと、その後の発展のおおもとにあったものは何だったのかを書いた。

編集者からの要望で、現場にいた一個人が経験したことを生なましく語るといったスタイルでリアリティのあるものにしたいということだったので、個人的な回想も盛り込んでいる。興味のある方はご一読ください。
「カースタイリング」Vol 008 三栄書房