2016年7月30日土曜日

サイモン・マースデン写真集「幽霊城」

Simon Marsden "Haunted Castles"

サイモン・マースデンという写真家の写真集を買った。とても面白い。(写真:「サイモン・マースデン写真集:幽霊城」より)

吸血鬼ドラキュラ伝説の舞台になった城が今もルーマニアに現存しているが、このような凄惨な歴史をもつ城の廃墟は他にもヨーロッパ各地にあるそうだ。

マースデンは赤外線カメラを使った特殊な技法で、そんな怖い城のイメージを撮り続けている。このダークな世界、なんとも想像力を刺激してくれる。

作者のWebサイトで作品を見れる。
www.simonmarsden.co.uk/

2016年7月24日日曜日

現代パステル協会展

 Exhibition of Modern Pastel Society


まもなく始まる「現代パステル協会展」(東京都美術館、8 / 3 〜10 )の今年の出品作。

前から廃墟をいろいろ描いていたが、だんだんネタ探しが大変になり、最近は廃墟を自分で作ることにした。地元にある近代的な火力発電所をモチーフにして壊してみた。
(「崩れゆく神殿」 F 40号   ハードパステル )

"Collapsing Shrine"  hard pastel on board primed with modeling paste,  100cm × 80cm


2016年7月20日水曜日

コルビュジェがデザインした自動車

The car designed by Le Corbusier

国立西洋美術館が世界文化遺産に登録された。それでコルビュジェがデザインした自動車について1年くらい前に書いたことを思い出したので再度アップする。

コルビュジェは1925年に「パリ・ヴォアザン計画」というパリの都市改造計画を提案する。古い街を壊して高層ビルを建て、広い道路を作りパリを自動車の街にするという構想だった。

計画は実現しなかったが、そのような都市のためには、自動車を金持ちのためではない、市民の足となる合理的な自動車が必要だと考えて自ら自動車をデザインした。道路や駐車場のスペース効率を高めるために車の大きさを2分の1にする。しかし最小限の大きさでも室内空間は最大限のスペースを確保する。というコンセプトで「マキシマムカー」と名付けた。人間の寸法を基準にして建築を設計する「モデュロール」の考え方を自動車にも応用したわけだ。

(写真:「クルビュジェが愛したクルマ」より)

コルビュジェはこのデザインを自動車メーカーに売り込むが成功しなかった。しかし戦後に登場した名車シトロエン2CVは形もコンセプトもそっくりで、コルビュジェの影響を受けた車だと言われている。


2016年7月15日金曜日

「ポンピドー・センター傑作展」

"Masterpieces from the Center Pompidou"

東京都美術館へ作品搬入に行ったついでに、「ポンピドーセンター傑作展」を観た。1906年から1977年までの約70年間を、1年1作家1作品という面白い構成で展示している。絵画だけでなく、彫刻・建築・デザイン・写真・映像などのジャンルをカバーしていて、20世紀の現代美術史全体を一望できる。(右:ブレッソン 「サン=ラザール駅裏」1932)

チラシのデザインのモチーフはもちろんポンピドー・センターの外観だと分かる。レンゾー・ピアノの建築模型も展示されている。(関空はもちろん無いが  笑)




2016年7月9日土曜日

映画「帰ってきたヒトラー」



たまたま見たこのコメディ映画というかパロディ映画、作品としてはたいしたことはないが、選挙シーズンの今、現実と重なってけっこう面白く笑えた。

死んだはずのヒトラーが突然今の世に現れるのだが、そっくりさんか、ものまねタレントだろうと思われ、TVのワイドショーの人気者にさせられてしまうというお話。

番組の中で、格差の問題や難民流入の問題などに憤り、既成政党がそれらに対応できていないことに怒る。人種差別の必要性も主張し、国民よ立ち上がれと演説する。昔のヒトラーと何も変わっていないのだが、これがけっこうウケてしまう。

現状への人々の不満を利用して大衆扇動をする現実の政治を思い出させることがこの映画のねらいだろう。「アメリカファースト」のトランプ、「イギリス独立宣言」のジョンソン、独仏の極右政党、などが頭に浮かぶ。日本で今やられているネットを使って若者を動員し人気投票的に票を集めようとする選挙運動も同類だろう。

最後に彼の言う「私が大衆を扇動したのではない。大衆が私を選んだのだ。」というせりふが、ポピュリズムと言われる今の時代を痛烈に皮肉っている。

2016年7月6日水曜日

横浜のアール・デコ:横浜銀行協会

"ART DECO"  in Yokohama : Yokohama Banker's Association


「横浜銀行協会」は昭和11年(1936年)築でアール・デコの名作とされている。明るく軽快感のある建築で、クリーム色の壁に褐色のテラコッタがあちこちにあしらわれているのがエレガントだ。窓を上から下までひとつながりの造形にするのもこの時代のよくあるスタイル。窓の彫りが深いので壁が列柱のように見える。玄関が左へオフセンターされているのが、官庁建築の重厚感とは違うカジュアルさを出している。最上階は戦後に増築されたそうで、たしかに違和感がある。


玄関ポーチのひさしを支える柱が1本というのも軽快感がある。ひさしの周囲のテラコッタのレリーフ、柱側面のややアールヌーボー的なレリーフ、入り口わきの6角形の窓、など印象的なディテールがちりばめられている。

インテリアも素晴らしいと聞いていたので、入ろうとしたら見学は一切ダメと門前払いされた。こういうのは初めてだ。歴史的建築の保全は大事だが、だからといって、金庫にしまっておくような(いくら銀行でも)保全では文化遺産の私物化になってしまう。

2016年7月2日土曜日

工場のイメージとギーガー

A image of plant and Giger

工場が好きであちこちへ見に行くが、あまり「萌え」ない。実際には銀ピカの近代的工場なのに、配管が複雑に絡み合った様子が生き物の内臓のように見えたりする。そんなあまり気持ちのよくないイメージを表現したいと思い写真加工でやってみた。


写真の表現力ではこんな程度だが、絵画ではもっとすごいのがある。スイス人の画家ギーガーは機械のイメージで気持ち悪い生き物を描いた。映画「エイリアン」(第1作)の例のグニュグニュ、ヌメヌメのエイリアンのデザインも彼だ。機械と生物が入り混じった表現を「バイオメカニクス」と呼んでいたが、すごい不気味さで、以来エイリアンものの映画は観れなくなった。近々「ギーガー展」があるようで(銀座ヴァニラ画廊、7 / 25 ~)こちらは怖いもの見たさで見に行こうと思う。