2024年4月28日日曜日

パースペクティブの ”良くない” 絵

 Two-point Perspective

遠近法(パースペクティブ)の教科書に必ず載っているのが、2点透視の「良くない」例で、例えばこの室内の絵。

ベッドの手前の角が 90 度以下の鋭角になっていて、このように見えることは現実にありえない。たとえ 90 度であってもベッドを真上から見ていることになるからありえない。このようになるのは消失点の A と B の間隔が近すぎるため。

これを正すには消失点の間隔を広げればいい。下図で、左の消失点は画面のはるか外にある。するとベッドの手前の角は鈍角になり、自然な見え方になる。


ただしこれは図法上の話しであって、絵画ではそうではないことがよくある。ひとつは見る人の視点が対象と至近距離にある場合で、ベッドに近い位置から見て描けば「悪い」例のようにならざるをえない。もうひとつは、上の「悪い」例の方が「良い」例よりも、ベッドが迫ってくるような ”迫力” があるから、絵画としてはデフォルメして、あえてこうすることがある。

そのいい例がゴッホの「アルルの寝室」で、ベッドと椅子の手前の角が 90 度に近い鋭角になっていて、「悪い」例に近い。これは部屋が狭いためにベッドを足元を見下ろすような角度から描いていることと、絵として動きのある構図にするために、あえてしているはずだ。


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