2018年3月13日火曜日

映画「ジャコメッティ 最後の肖像」

Movie  "Final Portrait"

画家がテーマの映画は、人間ドラマを絡めたり、伝記ものであったりすることが多いが、これは一枚の肖像画の制作の始めから完成までを描くことだけに徹している。だからジャコメッティの創作過程を生々しく見ることができる。

普通、肖像画といえばモデルに近ずくことが目標だが、ジャコメッティの場合は逆で、モデルはスタートにすぎず、そこから自分のイメージの中の像を描いていく。しかしイメージは初めからはっきり見えているわけでないので、描くことを通してそのイメージを探していく。だからちょっと描いては「クソ!」と言って頭を抱える苦悶の繰り返しになる。そしてやっと完成が近ずいたかと思うと塗りつぶしてしまい、また一から描き直し始める。このモデルは美術評論家で、2〜3時間で終わるからと無理やりモデルにされたが結局3週間も拘束されてしまった。その体験を書いた本をもとに映画化されている。

(なお日本人哲学者の矢内原伊作も長いあいだジャコメッティと親交があり、何度もモデルを務めたが、奥さんと不倫関係だった。ベッドの上に日本人がいるシーンが一瞬だけ出てくるのはこの矢内原のこと。)


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