2026年3月1日日曜日

映画「関心領域」

 The Territory of Interest

2年前に見た映画「関心領域」を、NETFLIX で昨日から配信していたのでまた見た。アウシュビッツ収容所の映画だが、恐ろしい映画だ。しかし恐ろしいといっても、収容所内の悲惨な光景などはいっさい出てこない。

冒頭でまずこの異様な光景が出てくる。手前に大きな庭があり、家族が遊んでいる。これは強制収容所の所長ルドルフ・ヘスの自宅だ。そして後ろに見えるのは強制収容所の建物で、囚人の建物や監視塔が見える。その間を塀一枚だけが隔てている。

そしてカメラは、収容所の内側へ入っていくことはない。だから悲惨なユダヤ人や、残虐な看守などは一切登場しない。つねに塀のこちら側の、ヘスと家族の日常生活を淡々と撮っているだけだ。プールや庭園などがある広大な敷地の邸宅でバーベキューをしたり、家族全員で近くの森や川へピクニックに行ったりする。ヘスは、家族思いの優しい夫であり父親なのだ。


昼も夜も何をしている時でもつねに、収容所から「ゴー」という音が聞こえている。焼却炉で人間を焼く音だが、ヘスも家族もまったく気にしていない。それは彼らにとって関心外のことなのだ。題名の「関心領域」はそこからきている。ヘスはその音を聞きながら毎日人間を焼く仕事を淡々とこなしている。

このように、どこにでもいるような普通の人であるヘスは、戦後の戦犯裁判で「人道に反する罪」で死刑になる。裁判で明らかになったのは、ヘスは残忍でもない、狂気じみた殺人鬼でもない、ユダヤ人に対する憎悪があったわけもない。ただ与えられた自分の任務を淡々とこなしていただけの真面目な役人に過ぎなかったのだ。映画は、どこにでもいる「普通の人」が平気で残虐な人間になれることを暴露している。それがこの映画の恐ろしさだ。


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