2025年7月14日月曜日

SNS 教信者たち

SNS Fanatic 

最近の選挙で、SNS をうまく使うと、トンデモ候補が当選してしまったりする。そうさせているのが、「SNS 教信者」たちだ。SNS の言うことはなんでも正しいと盲信している人たちが選挙におおきな影響を及ぼしてしまう。

アメリカではその状態がもっとひどい。前回の大統領選挙で、”外国人移民が犬を食っている”という荒唐無稽なSNS のデマ情報がトランプ陣営から発信されて、それをまに受けた「SNS 教信者」たちが、外国人移民排斥政策のトランプを当選させた。

もっとひどい例が SNS のデマ情報から始まった2017 年のミャンマーの少数民族の大虐殺事件だった。仏教徒である多数派のミャンマー人たちと、少数民族であるイスラム教徒たちとの対立が激しい同国で、少数民族に対する激しい憎しみや攻撃の情報が SNS で大量に発信された。それをまに受けた 「SNS 教信者」たちが実力行使を行い、少数民族の大虐殺につながった。同国のこの混乱は今でも続いている。(このミャンマーの 事件へのSNS の影響については、ユヴァル・ノア・ハラリの「ネクサス 情報の人類史」に詳しく解説されているので、参照されたい。)

今行われている日本の選挙でも、外国人移民問題が争点になっていて、それに関するSNS のデマ情報が飛び交っているようだ。それを盲信した「SNS 教信者」たちがさらに拡散している。


2025年7月12日土曜日

映画「わが谷は緑なりき」

How Green Was My Valley

昔、イギリスのウェールズ地方を訪れたことがある。ロンドンから西へ電車で2時間くらい行くと、ウェールズの首都カーディフだが、それよりさらに先のブリッジエンドという田舎の駅で降りた。そのあたりが昔、炭鉱で栄えた地方だが、今はさびれた過疎地になっている。一人ポツンと降り立った日本人にウェールズの人たちはとても優しかった。

その優しい人たちの土地ウェールズを舞台にした映画が「わが谷は緑なりき」だ。ジョン・フォード監督のこの名作映画は 1941 年制作(自分の生まれた年より古い)という超クラシック映画だが、改めて見てみた。ウェールズ地方の炭鉱の町が舞台のドラマだ。日本でも戦後、石炭産業が斜陽化して、次々と炭鉱が閉鎖され、炭鉱員たちが失業し、ストライキが頻発したが、それと同じ状況が描かれている。

父親と4人の息子がいずれも炭鉱で働いている労働者一家の姿を、幼い末っ子の目を通して描いている。炭鉱の不況で兄たちの給料が下げられたり、クビになったり、姉が炭鉱主の息子と無理やり結婚させらりたり、炭鉱の落盤事故で父親が死んだり、など不幸が続くが、一家の家族どうしの絆は強い。そして皆が同じ炭鉱で働いている住民たちも人情が厚く、お互いに助け合って生きている・・・ 

やがて時代は移り変わり、炭鉱は閉鎖され、町はさびれて、古き良き時代は終わってしまった。そして今では大人になった少年は、家族や町の人たちの懐かしく美しい思い出を胸に町を去ってゆく・・・


2025年7月10日木曜日

大阪万博「大屋根リング」はパクリ?

 Osaka Expo 2025


大阪万博の看板建造物「大屋根リング」がパクリだと言われている。有名な建築家ノーマン・フォスターが設計したアップル本社のリング状の施設にそっくりだと一部の建築家が指摘している。確かに形は似ているが、両者は施設の目的が違うので、パクリかどうかはなんとも言い難い。

しかし同じ万博の施設である1939 年のニューヨーク万博のリング状の建造物は大阪万博と同じ目的であるから、パクリであると言われてもしょうがないだろう。観客は回遊しながらリング内側の会場を眺める。形は少し違うが、同じ万博の、同じ目的の建物として、コンセプトはまったく同じだ。万博の歴史上で有名なこの建築のパクリだと指摘する人がいないのが不思議だ。



2025年7月8日火曜日

映画「善きひとのためのソナタ」

 Das Leben der Anderen 

前々回書いたこの映画について補足を。2007 年のドイツ映画だが、アメリカのアカデミー賞外国語映画部門で受賞した、おすすめできる秀作だ。東西に分断されていた時代のドイツを舞台にしている。

いきなりネタバレになるが、ラストのシーンが、東西ドイツが統一された後の主人公の後日譚で、感動的だ。秘密警察の元諜報員だった主人公が、書店に入っていき、ベストセラーになっている小説を手に取る。その本の著者は、自分が毎日盗聴をしていた作家だ。本の題名が「善きひとのためのソナタ」で、巻頭言に「感謝を込めて、HGW XX7 に捧げる」とある。「HGW XX7」とは諜報員だった時の自分のコードネームだった。書店員が「ギフト包装にしますか」と聞くが、「いやこれは自分の本だ」と答えて映画は終わる・・・


思想・言論の自由が厳しく統制されていた共産党独裁政治の東ドイツでは、反体制的な人間は家に盗聴器を仕掛けられて、 24 時間盗聴されていた。しかし主人公の作家は密かに東ドイツの内情を暴露する記事を書いて西側の雑誌に投稿していた。東西ドイツが統一された後、自分が盗聴されていたことを初めて知るが、それなのになぜ逮捕されなかったのか不思議に思う。いろいろ調査すると、盗聴していた諜報員が作家に共感していて、嘘の報告を上層部にあげていたのだ。その名前が 「HGW XX7」 だったことを知る、その経験をもとにして書いたのが映画の最後に出てきた小説「善きひとのためのソナタ」だった・・・

前々回書いたように、東西分断の厳しさを東ベルリンバスツアーでわずかながら経験したので、この映画にリアリティを感じる。

2025年7月6日日曜日

アメリカ独立記念日

 Independence Day & ”No Kings in America”

一昨日の7月4日はアメリカの独立記念日だった。イギリスの植民地だったアメリカが、独立戦争を戦って、独立を勝ち取り、世界一民主的な国家を創った。イギリス国王の暴政から脱し、民主的な政治を謳った「独立宣言」は中学校の社会科の教科書で習った。英語の教科書でも「Declaration of Independence」(独立宣言)が出てきて、この言葉を覚えた。中学校の教科書に載るほど、アメリカは世界中の民主主義のお手本で、誰もが尊敬し、独立記念日はそのシンボル的な日だった。

しかし今、「アメリカファースト」を叫ぶ大統領が出てきた。民主的な制度を次々にぶち壊し、他国にも強圧的な脅迫をして、国際的秩序を壊している。自分が「国王」になろうとしている大統領のもとで、今さらアメリカの独立記念日を民主主義の記念日として祝おうというほどの能天気な人はいない。

独立記念日に合わせて、6月14 日にワシントンで行われた軍事パレードが大きく報じられていた。トランプ大統領の命令で復活した国威発揚のためのパレードだが、この日は大統領自身の誕生日でもあったというから驚く。自分の権力を誇示するためのイベントで、アメリカの「国王」であるかのように振る舞っている。中国やロシアや北朝鮮の軍事パレードと同じ光景だ。

しかしこの軍事パレードに反対する大々的な抗議デモが行われたことも報じられていた。その人たちの掲げるプラカードには「No Kngs in America」とある。つまり、「アメリカに国王はいらない」というのだ。イギリス国王の暴政に反対し、民主主義を打ち立てたというアメリカ独立宣言に込められた精神を踏まえた標語だろう。アメリカの民主主義は民衆レベルでは、まだ死んでいないことがわかって少し安心した。


2025年7月4日金曜日

映画「善きひとのためのソナタ」と東ベルリンバスツアー

 Das Leben der Anderen

映画「善きひとためのソナタ」は東西に分断されていたベルリンを題材にした映画で、なかなかの秀作だ。東ドイツの秘密警察「シュタージ」が、反体制的住民の家に盗聴器をつけて監視している。その盗聴員が毎日聞こえてくる人たちの会話を聞いているうちにだんだんその人たちへの共感と、西側の自由な価値観への憧れが湧いてくる。やがてその住民が弾くピアノソナタに心を揺さぶられて・・・

この映画を見ていて、昔、まだベルリンの壁があった頃にベルリンに行った時、東ベルリンへ入るバスツアーに乗ったことを思い出した。「るるぶ」には載っていなかったが、そんな面白そうなツアーがあることを現地で知って、早速申し込んで乗った。東ベルリンは、昼なのに人通りがまったくなく、陰鬱で廃墟の街のようだった。豊かさと自由を求めて、命の危険を犯して西へ脱出する事件が後を絶たなかった時代の現実をかいま見た感じがした。

東西の境界線を越える検問所では、乗客は全員バスから降ろされ、東ベルリンの警備兵が車内はもちろん、エンジンルームも開けて中をチェックする。棒の先につけたミラーで車の下までも調べる。

その時、ある光景を目撃した。乗客の中のひとりの女性が小さな包みを持っていると、そこに別の女性が近づいてきて、無言のままその包みを受け取って去っていった。ツアーの観光客に紛れ込んだ西の女性が、親族らしき東の女性とあらかじめ示して合わせて、バスを降りる検問所での一瞬を利用して包みを受け渡ししていたのだ。包みの中身は食料品だと思うが、東ベルリンの不自由な生活と分断の厳しさをうかがわせる光景だった。


2025年7月2日水曜日

パステル画公募展を卒業

Pastel Painting 

約 20 年間参加してきたパステル画専門の公募展(現代パステル協会展)を今年でやめた。しかし、お絵描きおじさんたちの仲良しクラブ化している多くの公募展の中で、ここだけは公募展本来の目的である研究的な雰囲気を残しているから、今までとても勉強になった。

同展の応募規約に面白い項目がある。「パステルの使用割合が 60%以上であること」というもの。このことは逆にいうと、パステル画というものは、アクリルなど他のメディウムを併用して描くのが当然で、 100% パステルだけで描くことはあり得ないという前提に立っている。


パステルは粉なので、色のスキマから紙が透けて見え、完全に隠蔽することができず、スカスカしてしまう。だから、あらかじめ下に同系色を塗っておく必要がある。それが上記のような規約になる理由だ。さらに、下地色を工夫することで、いろいろな効果が出せる。例えば補色を塗っておくとか、明るい部分に暗い色を塗っておくとかするなどで、パステルを乗せたとき、面白い効果がでる。下塗りをどう利用するかによって、人それぞれのパステル画が生まれる。以下は下塗りの事例。(2014 年に投稿したものの再掲)



ところが近年、自分の関心のあるモチーフが建築や工場などのハードなものになってきた。すると、パステル画のやわらさや優しさなどよりも、力強さを求めるようになった。それで、アクリルの下塗りの比率が増え、パステルの使用比率が下がってきた。最近では、パステルは最後におまけのように使うだけで、応募規定の 60%以上をクリアするのが難しくなってきた。

以上がパステル画の公募展を卒業することにした理由だが、しかしパステル画自体は好きなので、これからも続けるつもりだ。