Das Leben der Anderen
映画「善きひとためのソナタ」は東西に分断されていたベルリンを題材にした映画で、なかなかの秀作だ。東ドイツの秘密警察「シュタージ」が、反体制的住民の家に盗聴器をつけて監視している。その盗聴員が毎日聞こえてくる人たちの会話を聞いているうちにだんだんその人たちへの共感と、西側の自由な価値観への憧れが湧いてくる。やがてその住民が弾くピアノソナタに心を揺さぶられて・・・この映画を見ていて、昔、まだベルリンの壁があった頃にベルリンに行った時、東ベルリンへ入るバスツアーに乗ったことを思い出した。「るるぶ」には載っていなかったが、そんな面白そうなツアーがあることを現地で知って、早速申し込んで乗った。東ベルリンは、昼なのに人通りがまったくなく、陰鬱で廃墟の街のようだった。豊かさと自由を求めて、命の危険を犯して西へ脱出する事件が後を絶たなかった時代の現実をかいま見た感じがした。
東西の境界線を越える検問所では、乗客は全員バスから降ろされ、東ベルリンの警備兵が車内はもちろん、エンジンルームも開けて中をチェックする。棒の先につけたミラーで車の下までも調べる。
その時、ある光景を目撃した。乗客の中のひとりの女性が小さな包みを持っていると、そこに別の女性が近づいてきて、無言のままその包みを受け取って去っていった。ツアーの観光客に紛れ込んだ西の女性が、親族らしき東の女性とあらかじめ示して合わせて、バスを降りる検問所での一瞬を利用して包みを受け渡ししていたのだ。包みの中身は食料品だと思うが、東ベルリンの不自由な生活と分断の厳しさをうかがわせる光景だった。
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