Homo Sapiens with Forms
「かたちと人類」という本が出たので、タイトルにひかれて買った。さまざまなキーワードごとに、絵画やデザインや建築などの「かたち」を収録している。帯にある「5万年の歴史と未来を描く」というほどには内容は深くないが、網羅的なので事典的に使うには便利だ。一例として「権威の軸」という項目の概要を簡単に紹介する。
古代エジプトのレリーフでは、シンメトリーの構図が多く、中心に権威ある王がいて、両側に従者などを配している。そこには「中心軸」の概念があり、それが、権力者の権威・威厳を表した。
この権力の象徴としての「中心軸」の強調が現代でも行われている。パリの街がその例だ。19 世紀のパリでは、暴動が頻繁に起きていたが、路地が迷路のように張り巡らされ、軍隊が鎮圧しづらい。そこでナポレオン三世は、パリの大改造を命じた。それでルーブル美術館と凱旋門の間を結ぶ広い直線道路ができた。現在のパリの姿は、もともとはナポレオンの権威の象徴だった。新しく建てられた新凱旋門もこの「中心軸」上にある。
権威の象徴としての一直線の中心軸にこだわったのがヒトラーの総督官邸だった。外国との首脳会談を総統室で行うが、ドイツ代表と外国代表は向かい合って座るが、ヒトラーだけはドイツ側には座らず、中央の司会席に座る。部屋自体が威圧するようなシンメトリーだが、その中心軸に座って、権力の上下関係を認識させるねらいだった。実際ヒトラーは、ヨーロッパの小国首脳をこの部屋に呼びつけて脅迫し、ドイツに従属させた。
そしてこの映像を引用したのが「スターウォーズ エピソード4」のラストシーンだった。両側に整列した兵士のあいだの一直線の道を3人のヒーローが歩いて、レイア姫の顕彰を受けるシーンだ。上の映像では3本のハーケンクロイツの垂れ幕が正面に掲げられているが、こちらではその代わりに5本のサーチライトが光っている。サーチライトも、ヒトラーのお抱え建築家のシュペーアが権力の象徴としてよく使った手法だ。
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