2025年12月14日日曜日

「終末映画」3選

Apocalyptic Movies

前回、「終末映画」のひとつ「レフト・ビハインド」について書いたが、今回はさらに3つの終末映画を紹介する。「終末」とは聖書の「黙示録」の思想で、やがて大惨事が起きて人類は滅亡して、この世は終わるという予言の書だ。終末映画は、その大惨事をさまざまな設定にしている。以下の3つはそれぞれ「核戦争」「パンデミック」「気候変動」という現代的な題材で終末の舞台設定をしている。そして終末思想の重要な点は、悲惨で絶望的なこの世が終わっても、その後に新たな素晴らしい世界が再出発するだろうという希望の物語でもある。「終末映画」のストーリーは、そのような聖書の物語に沿っている。


「ザ・ウォーカー」

題名の「歩く人」のとうり、主人公の男は最初から最後までひたすら歩き続ける。そこは核戦争で壊滅した廃墟の世界で、人間の文明は崩壊している。生き残ったわずかの人間は、略奪や強盗や殺人をやっている無法の世界だ。その闇の世界を牛耳っている男がいて、「歩く人」が 持っている持ち物を奪おうとする。しかし「歩く人」は強く、あらゆる攻撃をはねのけて持ち物を守る。しかし持ち物が何かを映画は最後まで明かさない。

最後の最後に着いた男の目的地は、生き残ったわずかの人たちが文明社会を再建しようと作っている図書館だった。そして男が持ってきたのは一冊の本で、それを本棚にそっと置く。カメラがその本のタイトルをクローズアップで映すと、それは「HOLY BIBLE」だった。それは地球上でただ一冊だけ残っていた「聖書」だったのだ。滅亡した世界を再建するのは聖書の力だというメッセージの映画だ。


「アイ・アム・レジェンド」

ウィルスが突然変異して強力になり、地球上の人口の9割が感染して死滅してしまう。残りの人間は凶暴な人食いゾンビになっている。荒廃した無人のニューヨークに生き残った主人公の科学者は必死に血清の開発をやっている。やがて血清の開発に成功するが、そのときゾンビ軍団に襲われる。男は血清を守るために、手榴弾でゾンビもろとも自爆してしまう。そしてその直前に大事な血清のサンプルをもう一人の女性の生存者に託す。

女性は、ニューヨークから避難した人たちの住むコロニーへ託された血清を届ける。村には大きな教会があり、外部の人間の侵入を防ぐために、銃を持った兵士が警戒している。そして星条旗が掲げられている。この映像は、アメリカを守るのは「軍隊」という政治権力と結びついた「教会」だ、というキリスト教原理主義者のメッセージを表している。そして人類のために命を捧げた主人公の科学者を、救世主(メシア)として讃えている。


「ノウイング」

主人公の少女の祖母が子供の頃に埋めたタイムカプセルを開けてみると、無数に書き連ねた暗号のような数字が出てくる。それを宇宙物理学者が読み解く。例えば「911012996」はアメリカ同時多発テロの日付と犠牲者数だった。他の数字も過去の天災や人災と一致していることが判明する。そして今後起こるであろう大惨事の予言の数字も含まれている。そして予言どうりの日に本当に大惨事が起こる。巨大な太陽フレアによるオゾン層破壊が原因で超高温になり、地球は大火災で焼き尽くされていく。人類滅亡の危機になったとき、異星人が宇宙船に乗ってくる。異星人は男女二人の子供を選んで宇宙船に乗せて連れ去る。

ラストで、二人が天国で幸せそうに遊んでいるシーンで終わる。この二人は聖書の物語にある、「携挙」で神に選ばれた人間に当たる。そして二人はやがて結婚して、新しい人類世界を樹立することを暗示している。


なお、終末論や終末映画については、以下の本が参考になる。
 「映画と黙示録」 岡田温司
 「アメリカ映画とキリスト教」 木谷佳楠
 「ハリウッド映画と聖書」 アデル・ラインハルツ

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