2025年12月2日火曜日

「読書」が認知症予防に最も効果がある

 Dementia & Reading

最近の研究によれば、「本を読む」ことが認知症の予防にもっとも効果的だという。ある研究グループの調査では、読書習慣の無い高齢者は、いつも本を読んでいる人に比べて、認知症の発症率が 2.5 倍も高いことがわかったという。

その研究によれば読書は、情報処理、理解、記憶、想像力、分析などの認知プロセスを担当する脳の領域を同時に使う。それによって脳細胞が刺激されて、脳の回路が強化される。認知症は、脳細胞が死滅することによって、認知機能が低下する病気だが、読書によって脳細胞が死滅するのを防ぎ、細胞を活性化し続ける効果があるというのだ。

なお、読書はしなくても、スマホを使っていれば読書と同じではないかというのは間違いだという。スマホは、簡単にひと通りの情報を読めば分かったつもりになれるお手軽な道具だから、読書のように能動的に頭を働かせる必要がない。だからスマホ依存でいると、思考力や理解力などの認知機能が低下し、かえって認知症を促進するという。


2025年12月1日月曜日

映画「ニーチェの馬」」

 「The Turin Horse」

このあいだ、タル・ベーラ監督の「サタンタンゴ」について書いたが、同監督のもうひとつの映画「ニーチェの馬」も 2012 年のカンヌ映画祭でグランプリを受賞した名作だ。そして両方とも原作が、今年のノーベル文学賞を受賞したクラスナホルカイ・ラースローの小説による。


映画は、荒野の中の一軒家に住む父と娘の二人だけしか登場しない。二人の6日間の生活を淡々と撮っているだけ。毎日、空はどんより曇り、吹き荒れる猛吹雪で、土ほこりが舞い上がる、という陰鬱な情景に終始する。会話はまったくなく、常に強風の吹き荒れる音だけが聞こえている。
  • 父親は、土ほこりの中、馬車で作業をしている。

  • 娘は毎日、強風の中を井戸へ水を汲みに行く。

  • 娘は吹き荒れる外の景色を一日中ただ茫然と眺めている。

  • 朝晩ふたりは、沈黙したままジャガイモ一個だけの食事をとる。

  • やがてなぜか馬が餌を食べなくなって衰弱してしまう。

  • 二人は家を出て、街に引っ越そうとするが馬車なしでは無理だった。

           食欲を失った父は一個のじゃがいもも食べなくなる。

そしてついに油がなくなり、ランプが消えてしまう。光のない暗闇のままで映画は終わる・・


この映画の邦題は「ニーチェの馬」だが、原題は「The Turin Horse」つまり「トリノの馬」だ。ニーチェがトリノの街を歩いていた時、馬が虐待されているのを見て、涙を流してそのまま発狂してしまったという史実に由来している。ニーチェは、現代の人間は生きていく目的を持てず、苦しみだけが降りかかり、神の救いもないという虚無の哲学(ニヒリズム)を唱えた。

この映画でも、馬がたびたび出てくるが、それによって二ーチェの思想を暗示させているようだ。なんのために生きているのか目的を持てないまま、ただ生きているだけの二人に苦しみだけが降りかかる。そして絶望のまま最後まで救いはない。