Film Noir
前回書いたように、「フィルム・ノワール」は、1940 ~ 1950 年代に多く作られた殺人事件がからむ犯罪サスペンス映画だが、戦前のドイツ表現主義映画の影響を受けていた。人間の不安や恐れを表現するために、白黒映画の特徴を活かした独特の映像手法が発達した。
「深夜の告白」(1944 )は、ビリー・ワイルダー監督によるフィルム・ノワールの名作だが、この映画を事例にして。フィルム・ノワールの全般に共通する映像の特徴をまとめてみた。
この映画は、保険会社の外交員が、美貌の人妻と共謀して、夫を殺して保険金を詐取しようと企む、というストーリー。事故死と見せかける完全犯罪のつもりだったが、保険会社は疑念を抱き調査を始める・・・
特徴1:光と影の強いコントラスト
フィルム・ノワールの意味が「黒い映画」であるとおり、夜のシーンが多いが、昼でも窓が閉まった暗い室内の場面が多い。だから光と影の明暗コントラスが強い映像になる。女が男にピストルを向けているこのシーンでも強いコントラストが緊張感を高めている。
女がソファに横たわっていると、突然男の影が壁に映り、知らない誰かが来たことに気づく。サスペンス性を高めるためのフィルム・ノワールの常套手段だ。
特徴3:人間の内面を映す鏡
外交員と人妻が会っているシーンで、2人は鏡を見ながら話している。表面的には差し障りのないことを喋っているが、実はそれぞれが企みを持っていて、そのことをお互いにわかっている。鏡は人間の内面を映すものとして使われている。
フィルム・ノワールの登場人物は、真実を語っているのか、人を欺くことを話しているのかわからない場合が多い。だからそれを判断させるために、カメラは目をクローズアップで撮る。”目は口ほどにものを言い”だ。
魅力で男を惑わせ破滅に導く女をファム・ファタール(宿命の女)というが、フィルム・ノワールでは必ずそういう女が登場する。外交員が家を訪れると、2階からバスタオルを身にまとっただけの女が現れる。外交員は魅了されてしまい、やがて二人は共謀して女の夫殺しへ突き進んでいく。そして最後に男は破滅する。女は典型的なファム・ファタールだ。
フィルム・ノワールで必ず登場するのが、事件の真相を解明しようとする刑事や私立探偵だ。彼らはたいていどこか影のある暗い人間の場合が多い。この映画の場合は、保険金の不正請求がないかを調べる保険調査員がその役をつとめている。事件は事故ではなく、殺人ではないかと疑い、しつこく調査する。クセの強いそのキャラクターが映画を面白くしている。
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