Panorama
一時スマホでパノラマ写真を撮ることがはやったが、そもそもパノラマ写真の始まりはどういうものだったのかについて、美術評論家の中原祐介氏の「タブローとパノラマ. 二つの視座」という論考に詳しい。
もともと19 世紀のイギリスで、見せ物小屋の出し物として、「パノラマ」が大人気を博した。超広角の風景の絵を、360°ぐるりと観客を取り巻くように設置したのが「パノラマ」だった。布に風景の絵を描き、この絵に後ろから光を当てると、布を透かして絵が光輝いて、リアルで幻想的になるというカラクリだった。
下の3枚は、同書に紹介されている当時のパノラマ用絵画の例。上から、山岳風景、ドイツの街の風景、ロンドンの街の風景。画家は見る方向を変えて複数枚の絵を描きそれをつなぎ合わせるのだが、それぞれの絵ごとに別々の消失点があるから、つないだ時に遠近法的な矛盾が出てしまう。それを誤魔化すのに画家は苦労したという。
そういう絵を描いていた画家のひとりが有名なダゲールだった。もっとリアルに迫真的に描きたいという願望から発明したのが写真術だった。写真術の発明のきっかけが、絵の代わりとしての手段が欲しいことだったのが面白い。
なお 19 世紀終わり頃までにはパノラマは廃れてしまう。芸術的価値のない絵だから、一回見ればもう一度見に行こうという人はいないからだった。
まるで本物の風景の中に自分がいるかのような没入感を感じたいという人々の欲求を満たすのがパノラマだったが、現在その役割を受け継いでいるのが、横長大画面の映画だろう。
もうひとつ思い出すのがパリにあるオランジュリー美術館だ。モネの「睡蓮」の連作が、円形の展示室に、観客をぐるりと取り囲むように展示している。これもパノラマ絵画の ”生き残り” かもしれない。
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