Escher 「Print Gallery」
エッシャーの「画廊」は複雑かつ不思議な絵だが、どういう原理で出来ているかを「エッシャー完全解読」(近藤滋)が読み解いている。著者は理系の科学者なので、エッシャーがどうやってこの絵を描いたのか、その思考と制作の過程を自らシミュレーションしながら論理的に推論している。
上の絵の左下で、男が画廊で絵を眺めているのが窓越しに描かれている。絵は港町の風景で、その2次元の街並みが、3次元に変化しながら、絵の右上へ連続的に拡大している。そして街並みの一番手前の家につがっている。その家のひさしが、右下にある画廊の屋根になっている。その画廊の左はじに、絵を眺めている男がいて、その絵は元の港町の風景画だ。出発点からぐるりと一周して、もとの2次元の絵に戻ってくる。
右の図は「絵画」→「画廊」→「街並み」→「建物」→「画廊」→「絵画」と、4分割した各部分が、循環していることを示している。しかし、この4つを単に並べただけでは滑らかに繋がらない。各部分ごとに拡大・縮小を繰り返していてスケールが合わないからだ。
そのためには、各部分のつながり部分が曲線になるように歪めなければならない。そのためにエッシャーは、普通は正方形にするグリッドではなく、曲線状に歪めたグリッドを使っている。実際にエッシャーの習作スケッチの中に、この手描きのグリッドが残っているという。(右図)
このグリッドは、中央に向かって縮小を無限に繰り返していくので、最後は微小すぎて描けなくなる。「画廊」の絵の中央に白丸の空白があって、そこにエッシャーのサインが入っているのは、そのためだという。
著者は、このグリッドの上に「回廊」の各部分を当てはめて、原画を復元するシミュレーションを試みている(下図)。このグリッドは全て曲線だが、縦2本、横2本の直線部分がある。これを手がかりにして、各パーツを変形する。下右図のように長方形の図形を扇型に変形する。著者は、photoshop の「変形」を使って歪みをつけている。(自分でもこの変形を photoshop でやってみたが、簡単にできる。逆にパソコンのない時代に、エッシャーは手描きでこれをやったのだからすごい)
以上、同書の要点だけをごく簡単に紹介したが、実際はもっと詳細な説明がされている。その内容を理解しやすい Youtube 動画をネットで見つけたので、見てもらいたい。
なお上記では省略したが、最初に室内にあった絵が途中で屋外から見た絵として再び出てくる。これもこの絵のポイントのひとつで、「ドロステ効果」と呼ばれる一種の「画中画」だが、それもこの映像ではっきり見ることができる。
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