2020年10月25日日曜日

マネ「フォリー・ベルジェールのバー」の鏡像の謎

Manet 「Un bar aux Folie Bergère」

去年(2 0 1 9 年)の「コートールド美術館展」で、マネの「フォリー・ベルジェールのバー」が目玉作品だった。だがこれは何か奇妙な感じがする絵だ。原因はミラーの右端に映っている紳士で、現実空間ではどこにいるのか、それとも実際に存在しないマネのイメージなのか。

その疑問をある研究者が見事に解き明かした。コンピュータ解析でこの絵の空間関係を解明して平面図にした。絵は女性の真正面から描いたのではなく、マネは少し右側にいる。赤い線が絵の画角で、紳士はこの画角の外側にいる。これなら確かに絵のように見えるはずだ。また紳士はカウンター越しに女性の正面にいるが、実は女性を見ているのではなく、この図のように、やや左のほうへ視線を向けている。つまり紳士は女性に語りかけているのではなく、鏡に映った遠くを見ていて、その視線の先にあるのは、絵の左上にいる白い服の女性だという。


この図面をもとに実物のセットを作って、モデルを立たせたというから執念がすごい。写真の色の濃い部分が絵に描かれた範囲だが、絵とピッタリ合っている。つまりこの絵は正確な遠近法で描かれていることが実証されたことになる。




0 件のコメント:

コメントを投稿