2020年10月15日木曜日

風景と道路のデザイン

Landscape and highway design

「風景学入門」(中村良夫)は面白い本で、視覚心理学的な観点から、風景の見え方を研究している。著者は道路公団で高速道路の設計をしていた人で、景観を考えた道路の設計の話が出てきて興味深い。


フランス映画を見ていると、田舎の細い道でも必ず両側に並木が植えてあるが、景観のためだけでないという。「視線誘導植栽」というそうで、木の列によって先々まで道路の曲がり具合がわかるので、安全走行に役立つという。右図の場合と比べると効果がわかる。


高速道路は、距離を最短にするために一直線の道路を通していたが、硬い直線がまわりの風景を引き裂いている。最近は、自然環境との調和を重視して、周囲の地形に溶け込むように緩いカーブの連続にしている。またカーブにすると、ドライバーは常にハンドルを動かしていなければならないので、眠くならず、安全面の効果もある。


山を削って切り通しにした道路は、地形を人工的に切断して景観的によくない。ドライバーにとっても両側を崖で挟まれる圧迫感がある。最近は山はそのままにして回り道にすることが多い。地形と道路の関係が自然だし、風景を楽しみながら走ることができる。


製品デザインで、直線と円弧をつなぐとき、間に「アプローチR」をはさんで変化を滑らかにするが、高速道路の設計でも同じことやっていることを初めて知った。「トランジション」(移り変わり)というそうだ。平面図ではさほど変わらないが、ドライバー目線で見ると大違いなことがわかる。視覚的に滑らかに曲がれそうに感じ、安心感がある。


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