2020年10月1日木曜日

「街角を曲がる」とキリコの絵

 "Turn the corner" and Giorgio de Chirico

「街角を曲がる」(大山敏男)は、道を歩いている時の風景の見え方を分析している面白い本で、散歩などで普段体験していることを思い返しながら読むと、なるほどと思うことが多い。

こんな図が出てくる。細い道を A → B → C と進んで行く時の視界(白い部分)の変化を示している。A 地点では突き当たりしか見えないので行き止まりなのかと思う。B まで来ると小さい広場があるらしいと気がつく。C で広場全体が見えてその先にまた道が続いていることに気づく。

こういう道を初めて通るとき、先が見通せないので、これからどんな風景が現れるのかという期待感と、変なところへ出てしまわないかという不安感が入り混じる。

これで思い出すのは、キリコの「通りの神秘と憂鬱」で、この図とまったく同じ状況を描いている。図の B 地点から見た光景で、広場があることは分かるが、まだ全体は見えていない。ただ大きな人間の影だけが見えるので、誰かがいることが分かる。不吉な影だが、そこへ向かって少女が無邪気に駆けていく。少女が「街角を曲がった」先に何があるのか不安だ。

第一次世界大戦が始まった年の作品で、これから先の世界がどうなるか見通せないという不安感を描いた絵とされている。 


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