2020年10月17日土曜日

浮世絵の「一文字ぼかし」

Sky color of Akiyo-e

浮世絵には必ずといっていいほど、画面上端に青い色のグラデーションがあしらわれている。「一文字ぼかし」というテクニックで、水で濡らした版木の上に青い色を乗せると、色が滲んでグラデーションができる。それを紙に摺りとる。空の青を全体に塗らず、上端だけにとどめて、あとは省略している。

広重「東海道五十三次  袋井」

青空でない天候の場合は朱色がよく使われる。この強風の曇り空のシーンでは、茶色っぽい色が使われている。イエロー・オーカーに近い朱色もよくある。

広重「東海道五十三次  四日市」

黒の場合もある。これは広重の最高傑作だと思うが、暴風雨の暗い空を黒色にしている。

広重「東海道五十三次  庄野」


「一文字ぼかし」の色がその絵の天候を示す「記号」のような役割をしている。季節や時間や天候などによって色を使い分けている。
   青 → 晴天、昼間
   朱 → 秋、朝焼け、夕焼け
   黒 → 冬、雪、雨、夜


「一文字ぼかし」を使わなケースを探したら、空全体をピンクにした例があった。ここ舞阪は浜松近くなので、小さく見えている富士山はほぼ真東になる。したがってこれは、東の空の朝焼けを描いたのだろうか。

広重「東海道五十三次  舞阪」

もう一つの例は雪の夜のシーンで、黒のぼかしを上下逆にしている。黒色が家や山に積もった雪とのコントラストを作っている。

広重「東海道五十三次  蒲原」


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