2020年11月24日火曜日

「ピクセル化」した絵画

"Pixel"  Painting

スーラの点描画の代表作「グランド・ジャット島の日曜の午後」の部分拡大図をさらに拡大するとドットの一つづつがはっきり見えてくる。この2mmくらいの小さな点が2m × 3mの画面を埋め尽くしている。現在の高精細画像モニターに匹敵する高解像度だった。スーラは絵画を「ピクセル化」した先駆けだった。


ヴィック・ムニーズという現代画家は、歴史的名作絵画をピクセル化した作品をたくさん描いたが、スーラの「グランド・ジャット島の日曜の午後」も描いている。スーラよりずっと粗いピクセルにしているが、ピクセルはジグソーパズルのピースの形をしていて、絵はパズルが完成した状態のように描いている。


ピクセルをさらに粗くしていくと、形が見えなくなるモザイク写真になる。サルバドール・ダリは「2 0 メートル離れるとエブラハム・リンカーンの肖像に変容する地中海を見つめるガラ」という長い題名のモザイク画を描いた。題名の通り2 0 mくらい離れて見るような小さいサイズで見ると確かにリンカーンの顔が見えて来る。


モネは筆触分割という手法で、スーラよりさらに早いピクセル化の先駆けだったが、そのモネの「ルーアン大聖堂」シリーズの一枚を、アメリカン・ポップアートのロイ・リキテンシュタインがピクセル化した。新聞の網点写真のように粗いドットで描いている。


ドイツの現代画家ゲルハルト・リヒターは、様々な手法を使って写真と絵画の融合を試みたが、この「アブストラクト・ペインティング」では、粗いピクセルで描いている。このモザイク画像から何の形が見えるか。答えは「無し」。ピクセルそのものをモチーフにしているが、具象的な形の無い単なる抽象絵画だ。カラー・チャートを並べただけのような反絵画的な絵画に行き着いた。



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