2020年11月2日月曜日

名画の遠近法 ③ 「坂道」

 Perspective in masterpieces 「Uphill and Downhill」

ピサロの「ルーブシェンヌの雪道」は、雪の降った後の朝のすがすがしい気分が伝わってくる。この道は下りの坂道だと思う。それを作図で確かめてみた。家は水平なので、その消失点はアイ・レベルにあり、道路の消失点はそれより下にある。消失点が2つあり、そのわずかな差で下り坂に見える。ピサロの描写が正確だからこそだが。

斜面の消失点は、上り坂ならアイ・レベルより上にあり、下り坂ならアイ・レベルより下になる。ピサロの絵は、この原理どうりに描かれている。

東山魁夷の「道」はシンプルに道路だけで、建物など比較するものがないのですぐにはわかりずらいが、これは登りの坂道のはず。道路の線を上に延長してできる消失点が地平線より上の空の中にあるからだ。道路は途中で切れているが、そこを過ぎると下り坂になっているのだろう。この道をずっと歩いて行きたくなる。

複雑な坂道の説明図で、下りの坂道だが、途中で勾配が変化している。そのため道路の消失点が複数できている。手前の角度は緩やかだが、その先は急角度の下りのため道路が見えなくなり、駐車している車だけが見えているが、その傾きで急坂ぶりがわかる。その先は平坦になり、川まで続いている。家は坂に関係なく水平に建っているから、消失点(V P 1)はアイ・レベルの地平線上にある。(図は How to Use Creative Perspedtive より)


ピサロの雪道の絵で、女性二人とすれ違うとき、紳士が車道にはみ出て道を譲っている。この道は遠近法的に複雑で、勾配の変化に加えてカーブが組み合わさった変化に富んだ道になっている。どんな道か作図して調べてみた。アイ・レベルは右側の家から推測した。道路は1から6までの6つの面の連続になっている。それぞれの面の消失点の位置がアイレベルより上か下かで登りか下りかがわかる。3は消失点(VP3)がアイ・レベル上にあるので平坦。手前の1から下っていき、3で平坦になり、4、5、6は登り坂で、だんだん急角度になっていく。変化に富んだ道が魅力的な風景だ。


ユトリロの「百階段」は、長い階段を下から見上げている。途中に踊り場がいくつかあるが、階段の傾斜は一定なので、側壁の線は一つの消失点(VP1)に集まる。そしてそれははるか高く空の中にある。踊り場での側壁は水平なので、消失点(VP2)は見ている人のアイ・レベルの線上にある。なおアイ・レベルの高さは手前にある街灯の高さから推測した。


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