ワイエスはいわゆる静物画のスタイルではないが、身近かな物を取り上げている。それらは物だけではなく、環境のなかに置かれた状態で描かれている。そのことによって、物を単に物体として描くのではなく、いままでそれを使っていた人間のシチュエーションを感じさせてくれる。いちばん上の絵は、掃除道具などが描かれ生活感がたっぷり絵だが、ワイエスが知人の家へ行ったとき、本人が不在だったのに、この光景を見てあたかも本人がそこにいるかのような強い存在感を感じ、ポートレートのようなつもりで描いた、と書いている。中の絵は「スコール」という題名で、雨の中を戻ってきた妻が脱いだレインコートを描いているが、窓の外の暗い空と連動してストーリーを感じさせる。
ワイエスは多様なテーマで膨大な数を描いたので、この「ベスト」シリーズはいくらでも続けられそうだが、きりがないので、このへんで。
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