2014年6月11日水曜日

ワイエス(その1)

アンドリュー • ワイエスのファンになってからもう 40 年くらいになる。日本でも愛好者がとても多いので、何年かごとに展覧会があるが、必ず見に行く。最近 90 何才かで亡くなるまで絵を描き続けたので作品数がとても多く、そのたびに違った作品が見れる。個人のコレクターもいて、例えば埼玉県にある「丸沼芸術の森」という施設に多数のワイエスコレクションが所蔵されている(常設展示はしていない)。彼の絵の魅力はどこにあるのか。魅力を生み出している要素の分類を試みてみた。


(1)懐かしい風景
生涯を田舎で暮らし、たくさんの身近な風景をアメリカの原風景のように描いた。この例では、古い平凡な農家を描いているが、単に建物を描いているだけでなく、住んでいる人の生活を感じさせ、どこか懐かしい感じを与えている。手前のバケツが効果的。


(2)精密描写
「アメリカン • リアリズムの巨匠」と言われるとおり、写実的描写力が圧倒的。この例は大きい絵の部分だが、物の材質感がすごい。


(3)空間感
空間の広がりや奥行きを強く感じさせる風景画も多い。この絵は何も無い草原を描いているが、どこまでも続く広大な空間が魅力的に表現されている。


(4)光と風と静けさ
光や風を描くのがとてもうまい。ここでは、窓から吹いてくる風がカーテンをゆらしているが、しんと静まりかえったような寂しくメランコリックな感情をさそう。


(5)ミクロのクローズアップ
身近かにある何げない対象物に目を向け、それだけを主題にして描くことも多い。これは、丸太と斧だけの小さいモチーフだが、とても力強い存在感がある。


(6)意表をつく構成
モチーフの扱い方や画面構成で、ときどきあっと驚くようなことをよくやる。これは老夫婦の絵だが、人物画でこのような構成は他ではあまり見たことがない。夫の持っている銃が妻の方へ向いているのがユーモラスだ。




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