2014年6月26日木曜日

アメリカン • リアリズム(4)

アメリカン • リアリズムは、なぜイラストレーションと相性がいいのか、考えてみた。

例えば、エドワード • ホッパーの「深夜の人たち」を見ると、この絵に描かれているストーリーを語ることができる。例えば「昼の仕事に疲れた男女が人通りのなくなった深夜にカフェテリアに立寄りコーヒーを飲んでいる。他の客は一人しかいない。店員は閉店のしたくをしている。暗い街路の中でひとつだけ明るいこの店もすぐに暗くなるだろう。」tといったぐあいに、絵を言葉で説明できる「物語性」があるのがアメリカン • リアリズムの特徴ではないか。

一方イラストレーションは、雑誌などの記事のイメージをより明確に読者に伝えるために文章を視覚化するためのものだから、文章の内容を具体的に表現する「物語性」が必要になる。物語は抽象絵画では伝わらない。リアルな写実絵画が必要になる。このようにアメリカン • リアリズムとイラストレーションに共通しているのは「物語性」だと思う。

ムンクの有名な「叫び」を見ても物語は語れない。生活苦で橋から身を投げようとしているのか、誰かに襲われて恐怖で顔が歪んでいるのか、叫びの具体的な内容は分からない。それは人物や景色が抽象化されていて、これがどんな人間でどんな状況かを特定できないからだ。この抽象化によって逆に、個別の人間の個別の状況の「叫び」ではなく、現代社会の普遍的な苦しみに対する「叫び」というメッセージが伝わってくる。この絵が現代絵画のさきがけとされるのは、物語性と写実主義から離れ、抽象化へ一歩踏み出しているからだろう。

アメリカン • リアリズムは古くさい絵画だとされることもあるのは、そのような意味からだろうと思う。

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