2022年11月26日土曜日

ルネ・マグリットの「大家族」

 Rene Magritte

日経新聞の「空を見上げて  十選」にルネ・マグリットの「大家族」が選ばれていた。選者の哲学者  小林康夫氏がこの絵を解説している。


同氏はこの絵について、『暗い空は「今日の曇り空」で、明るい空は「明日の青空」を意味し、「わたし」は遠くの広大な「明日の青空」を夢見ている・・・』といった哲学的(?)な「物語」を語っている。

この絵は、暗い空に鳥の形をした青空が描かれているが、これはシュールレアリズムの用語でいう「デペイズマン」にあたる。それは『事物を日常的な関係から追放して、あるはずがないところに物がある、というような人間の理性や合理性を超越した状況の表現を意味する』と説明されている。

それは、絵の裏にある「物語」を読み取ることで、その絵を「理解」できたとする伝統的な絵の見方を拒否している。現代の絵画は「物語」を排除して、純粋な視覚の芸術を追求している。抽象絵画もそうだが、マグリットは、トリックアートのように視覚を裏切ることによって、合理的な「物語」で解釈されることを拒絶している。

しかしこの解説者はそうしない。鳥の下の方にある小さな黒い部分についてこう言っている。『なんというヘマだ !  「明日の青空」の中に「今日の曇り空」のかけらが取り残されてしまっているではないか ! ! ! 』 もちろんこれは簡単な勘違いで、鳥の脚と尾の間の空間に背景の暗い空が見えているだけのことだ。自分が作った「物語」に引きずられて、素直に絵を「見る」ことができなくなっている。


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