2022年11月24日木曜日

「空を見上げて 十選」になかった空の絵

日経新聞の連載コラム記事 「空を見上げて  十選」シリーズが終わった。空の絵などは無数にあるから、 1 0 点だけを選ぶのは苦労したと思う。選者は哲学者の小林康夫氏で、”哲学的な” 観点から絵を解説している。

取り上げられた 1 0 点は、コンスタブル、ジョルジョーネ、屏風絵、クロード・ロラン、ターナー、ゴッホ、ホイッスラー、古賀春江、イブ・クライン、ルネ・マグリット


これ以外にも「空を見上げた」絵は、優れたものがまだまだあるので、補足してみる。


フリードリヒの「海辺の修道僧」は、海辺で修道僧が空を見上げている。これ以上に「空を見上げる」絵はないと思うが、十選に漏れている。暮れかけた空は暗く、海は真っ黒だ。広大な空を見あげている修道僧は豆粒のように小さい。圧倒されるような自然の崇高さと、人間のはかなさを想いながら修道僧は瞑想している。

人々が暗雲で覆われた暗い空を見上げている。ドイツの現代画家リヒャルト・エルツェの「期待」が描かれたのは 1 9 3 5 年で、大恐慌まっただなかで、ヒトラーが政権を握り、戦争がやがて始まることが予兆される不安な時代だった。この絵は、そのような人々の不安な気持ちを空に託して幻想的に描いている。

「空を見上げる」ということは、見る人の関心が地上より上の方向に向いているということだが、そういう視線で描いた画家はたぶんロイスダールが初めてではないか。空の面積を大きくとるために縦長の画面にしている。地上の物たちは、空のスケールの大きさを強調するための引き立て役にすぎない。


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