2020年5月8日金曜日

肌理(きめ)の遠近法、ゴッホとスーラ

Gogh & Seurat
二つの絵を比べてみる   肌理の遠近法、ゴッホとスーラ

遠近法といえば、普通は「線遠近法」のことだが、他にも「空気遠近法」など色々な種類がある。「肌理の遠近法」もその一つで、ギブソンの名著「生態学的視覚論」で詳しく研究されていた。草原の草や、砂利道の石などによる地面の肌理(きめ)を、近くを粗く、遠くを密に描くと、見る人は遠近感を感じる。



ゴッホの「夕日の麦畑で種子をまく人」は分かりやすい例で、手前と遠景とで、地面の肌理の粗さと密度を変えて、遠近感を出している。建物などの直線要素がない風景では線遠近法が使えないから、この方法が役に立つ。
同じ点描画でもスーラは、「肌理の遠近法」を使っていない。同じ大きさの点を、同じ密度で全体を埋めていて、肌理が均一になっている。だから奥行き感のない、平面的な絵になっている。もちろんそれは、空間より色彩重視のスーラが意図的にやっていることだが、おかげで「肌理の遠近法」の効果がわかる反面教師になっている。

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