Hammershoi & Vermeer
二つの絵を比べてみる ⑨ ハマスホイとフェルメールの室内画
ひさびさにハマスホイが来日したが、コロナ禍で会期途中で終わってしまった。早くに見ておいてよかった。
この展覧会でもそうだったが、ハマスホイには「北欧のフェルメール」というキャッチフレーズがつけられる。しかし室内画という点では共通していても、両者の違いは大きい。
この「ピアノを弾くイーダのいる室内」は、奥の部屋で女性(ハマスホイの妻)がピアノを弾いている。これとよく似た題材のフェルメールの「音楽の稽古」と比べてみる。
ヴァージナルを弾いている女性を先生が指導している。ハマスホイとの共通点は、人物が画面の奥にいて、手前に広い空間をとっている点。だがフェルメールの方は、女性や先生が主題になっていて、絵に「物語性」がある。
ハマスホイの方は、室内の「空間」を描くのが眼目で、人物は、見る人の視線を奥に導くことで空間の奥行き感を強調ために使っている。ハマスホイの絵は人物がいないか、いても生きた人間を感じない彫像のように描かれる。だからフェルメールと違って、ピアノの音が聞こえてこない、静かな絵だ。
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