2020年5月14日木曜日

日本の食文化とコロナ

Food culture of Japan

子供の頃暮らした田舎では、江戸時代の風習がまだ残っていた。婚礼や宴会などの人が集まる時の食事は4本脚の「お膳」で供された。こういうお膳スタイルはすでに縄文時代から始まっていて、時代とともに洗練されていったという。「本膳料理」「会席料理」などもすべて「お膳」で成り立つ食事形式だ。今でもファミレスの「〜御膳」というメニューに名残りがある。

それぞれの人の食べ物をあらかじめ取り分けて、「自分用のお膳」(いわばパーソナル・テーブル)にまとめて供するのが日本独特の食文化だった。西洋や中国のように、テーブルを囲んで大皿から各人が取り分けて食べるという形式は、日本の歴史には全く存在しなかったそうだ。家族が「ちゃぶ台」を囲んで食べるスタイルは明治になってからの新しい歴史だという。

食べ物が各人ごとのお膳にまとめられていて、食べ物、食器、箸などを他人と共用しない文化の背景は、身分制度の厳しい社会で、食事にも身分差つけようとしたことと、他人の使用した食器はけがれていると感じる「けがれ思想」とがあるという。「割り箸」も食器を他人と共有しない文化の極致だろう。

コロナ対策で、ソーシャル・ディスタンスをとり、向き合って食べないようにというが、日本の「お膳」スタイルはもともとそうだった。

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