2019年7月1日月曜日

広重の「覗く」フレーミング

Hiroshige & Hokusai

この間終わった「江戸の凸凹」展(太田記念美術館、~ 6 / 26 )を見た後、広重について本(「広重と浮世絵風景画」)で調べているうちに面白いことがわかった。


広重の風景画では、風景を切り取るフレーミングのやり方が面白い例がたくさんある。この「深川万年橋」は、梁や柱を画面枠いっぱいに描いていて、窓が風景を切り取る額縁(フレーム)の役割をしている。そして窓越しに風景を「覗いている」という視覚効果がある。

このような「覗く」フレーミングというのは、浮世絵に共通した視覚で、北斎の「尾州不二見原」では、丸い桶の向こうに富士山が見えている。桶という枠で切り取った富士山を「覗いている」。
このようなフレーミングは、浮世絵の前身の浮絵では、もっとはっきりしていて、奥村政信の浮絵では、こんな構図がたくさんある。柱、敷居、鴨居が画面枠にぴったり内接して描かれていて、額縁そのものになっている。江戸時代、レンズを通して箱の中を覗いて絵を見る見世物が盛り場によくあったそうで、浮絵は、それ用の絵だったという。だから一点透視(風)が使われ、風景が浮き出てくる(だから浮絵)ように感じさせた。この「覗く」という視覚が、広重や北斎の浮世絵にも引き継がれていったということのようだ。

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