2023年12月6日水曜日

「過去」の万博が見せた「未来」の夢 大阪万博は何を見せる?

 Expo

2025 年の大阪万博で、目玉として予定されていたドローン・タクシーの運用が実現不可能になり、デモフライトだけになるという。ドローンのモビリティはすでに世界中で実用が始まっていて、いまさら未来的な技術ではない。それさえ実現できないというのでは、「未来を見せる」という万博の役割は果たせるのか疑問になってくる。

「パスト・フューチュラマ」という本は、「過去」の時代に、その時点で人々はどんな「未来」を夢見たのかを紹介している。映画の「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のようで実に面白い。その本に、過去の万博の出し物も出てくる。

1939 年のニューヨーク万博はテーマが「明日の世界」だったが、 GM 館で、未来都市のイメージを巨大なジオラマで作り、それを回転する観客席から見せる「フューチュラマ」という展示が大人気を呼んだ。そこでは人と車を分離する道路や、道路を立体交差させる高速道路のイメージがすでに提案されていた。


そして GM は高速道路のための車も提案した。それが完全自動運転の車だった。今から約 80 年前のことだ。イラストで、家族全員が向かい合ってゲームをしている。ハイウェイからの信号で車をコントロールするシステムで、実際に試作車で実験も行われた。(今年の Tokyo Mobility Show で、ホンダ・GM (またしても GM)が 2026年に完全自動運転のタクシーを実現すると発表したが、80 年ぶりに「過去の未来」に追いつく事になる)


この時の万博で見せたのは未来の都市のあり方と、そこでの人間の暮らしへの夢だった。生活が豊かになり、人々は郊外の庭付きの家に住むようになる。夫は都心に車で通勤し、妻はスーパーへ車で買い物に行く。だから一家に2台車を持ち、家には2台入るガレージがある。やがてこの夢が実現していく。 1946 年に実際にハイウェイの建設がアメリカ全土で始まる。そしてモータリゼーションが一気に進んでいく。

やがてモータリゼーションは過熱していき、車は「モノ」への欲望の対象になる。当時の車の広告(右)でそれがよくわかる。大量消費社会になり、環境問題にもつながってきた。そして今、持続可能な社会への転換が始まりつつある。だから今度の大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だが、そのとうりに「未来社会のデザイン」をしてくれるのかどうか? 

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