John Martin
19 世紀イギリスのロマン主義の画家ジョン・マーチンは歴史画を多く描いたが、多くは題材を聖書の物語からとっている。
「ソドムとゴモラの滅亡」は、旧約聖書の「創世記」にある、火による神の制裁の話をもとにしている。悪徳の街ソドムとゴモラの上に天から硫黄と火が降り注ぎ、これらの街の住民すべてが滅ぼされる。この物語にはイスラエル人やパレスチナ人などが様々登場するが、街が滅ぼされた後、再び復活して新しい世界が生まれるが、そこではイスラエル人が支配し、他の民族はその奴隷になる。これは現代まで続く中東の民族間対立とユダヤ選民思想の起源になっているという。(平松洋「週末の名画」による)
「大洪水」は俯瞰的に見下ろす広大なパースペクティブで描いている。天が黒雲に覆われ、稲妻が天を切り裂き山が崩れ、裂けた地には海流が流れ込んでいる。人々はのたうちまわり、救いを求める阿鼻叫喚の世界だ。聖書によれば、人類に悪がはびこり、神は人類を創ったことを悔やんで、すべての生物とともに人類を地上から滅ぼそうと決意する。この絵は、神の怒りによって惹き起こされた天変地異による終末のビジョンを描いている。
ジョン・マーチンといえば、この「神の大いなる怒りの日」が有名。聖書の「ヨハネの黙示録」にもとづく世界の終末を描いている。上が「水」による終末だが、こちらは「火」による終末だ。しかし終末は人類が永遠に絶滅するという意味ではない。黙示録によれば、この終末の後、キリストの聖徒がよみがえり、新しいエルサレムの王国が千年間にわたって地上を支配するとしている。それが今日のユダヤ・キリスト教の世界観のおおもとになっている。
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