2020年12月14日月曜日

絵画の ”パワー”

Edward Bruce 「Power」

ドイツのメルケル首相のコロナ対策が世界から注目を集めた。零細企業や自営業者向けの緊急支援を、芸術・文化領域にも適用して6兆円の経済支援を決めたからだった。文化統制を行ったナチス時代の反省から、戦後のドイツは芸術・文化を通して多様な価値観と向き合うことで共生社会を築こうとしてきたことが背景にあるという。

危機の時にこそ芸術・文化の力が必要だと考えて国が支援をした例は他にもある。 1 9 3 0 年代の大恐慌時代のアメリカで、政府によって美術活動を支援する組織が創設され、多額の国家予算が投入された。それは美術家の経済的支援という意味よりも、人々が困窮で苦しんでいる時こそ、美術の力が社会にとって必要だという考え方があった。(アメリカ美術叢書「夢見るモダニティ、生きられる近代」より)

その美術支援組織のトップだったエドワード・ブルースという人は自身も画家で、「パワー」という絵がある。ニューヨークの高層ビルに後光のように神々しく光がさしていて、工業力の象徴としてのブルックリン橋が手前に描かれている。大恐慌の最中に社会のネガティブな側面を描くのではなく、アメリカの ”パワー” を示す風景に未来への希望を託しているようだ。だから多分に国策的な絵ではあるが、絵画が個人の趣味の問題でしかない日本では生まれない絵かもしれない。



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