2020年12月8日火曜日

「ギザギザが美しい」という風景画理論とリチャード・ウィルソン

 "Picturesque" and Richard Wilson

1 8 世紀イギリスでウィリアム・ギルビンという人が風景画の美しさについて理論化した。「絵のように美しい風景」を「ピクチャレスク」という造語で説明した。その例を示しているが、なだらかな丘や山の風景は「非ピクチャレスク」であり、ギザギザした丘や山は変化があって「ピクチャレスク」であるとした。(画像は「ランドスケープとモダニティ」より)


ピクチャレスク美学の推進者ギルビンが理想とした風景を求めて画家たちはあちこちを旅した。中でもリチャード・ウィルソンは「イギリス風景画の父」として有名だが、今度の「ロンドン・ナショナル・ギャリー展」(現在は大阪巡回中)で「ディー川に架かるホルト橋」が来日していた。変化に富んだ部分部分を一つの全体にまとめ上げていて、ギルビンの理論どうりだ。右手の崖が実際以上に高くゴツゴツと描かれていたり、手前の樹の形なども、ギザギザ理論に合っている。(画像は「同展図録より)


普段はリチャード・ウィルソンの絵を日本で見ることができないが、一か所だけ常設展示している場所がある。横浜山手の洋館「イギリス館」は戦前イギリス総領事の公邸だったが、その寝室にウィルソンの作品が2点飾られている。領事のコレクションだったのだろう。作者や題名などキャプションがないので、管理事務所に確認したが、やはりウィルソンで間違いなかった。



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