2019年8月15日木曜日

中止された展覧会と、ヒトラーの「空は青く、樹は緑に!」


中止になった名古屋の芸術祭のゴタゴタがまだ続いているようだが、ある政治家が「ヒトラーと同じだ」と批判したそうなので、同じかどうか比べてみた。

ヒトラーは「空は青く、樹は緑に!」と言って「国家社会主義美学」に一致しない絵画を美術館から撤去した。それらを列挙すると、ゴッホ、ゴーギャン、マティス、ピカソ、ブラック、ドラン、ルソー、カンディンスキー、シャガール、キリコ、ヴラマンク、アンソール、リシツキー、ドースブルフ、など(「全体主義芸術」より)で、近代絵画は全滅した。

戦争で人間を大量に殺しあう20 世紀になって、もう今までのように「空は青く、樹は緑に!」というような美しいものとして世界を描くことができなくなって、「美しくない」現実をありのままに表現する方法を画家たちは模索した。だからそれらは政治目的のための絵ではないのに、ヒトラーは政治批判につながる危険性を感じて弾圧した。

名古屋の展覧会を中止させたのは、ヒトラーと同じで、表現の自由の侵害だと批判している政治家がいるそうだが、問題の作品はもともと政治目的で作られたのだから、芸術表現で抑圧された作品といっしょにしないほうがいい。

ヒトラーは押収した作品を集めて「退廃美術展」を開くが、作品ごとに美術館が買った値段を表示して、これだけ国の税金をムダ使いしていると非難した。名古屋で中止に追い込んだ側の政治家が「偏った作品に国民の血税を使っている」と批判しているようだが、その言い方は確かにヒトラーと同じだ。
(写真は、「退廃芸術展」を下見するヒトラー、映画「ヒトラー VS ピカソ」より)

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