2018年11月30日金曜日

ピエール・ボナールの食卓の絵

Pierre Bonnard

今「ピエール・ボナール展」(国立新美術館)をやっているが、一番面白かったのは食卓の絵だった。ボナールは食卓の絵をたくさん描いているが、みなテーブルを四角に描いていて、遠近法的な見え方を無視している。


普通に描けば、テーブルは向こう側ですぼまり、食器などは前後の重なりと奥行きが生じる。しかし遠近法的に物を見ることができない子供は概念で描くから、テーブルは四角く描き、食器は個々バラバラに描く。ボナールは子供と同じ見方で描いている。これをボナール自身は「生の見方」と呼んでいたそうだ。テーブルや食器を遠近法的に一つの空間として関係づけずにバラバラに描いているのは、たしかに「生」といえるかもしれない。

( 子供と画学生の食卓の絵の比較 。 "Objective Drawing Techniques" より)

2018年11月28日水曜日

ムンク展

Exhibition  "Munch, A Retrospective"

ムンク展(東京都美術館)の「病める子」は、以降のムンクの起点になった作品といわれているが素晴らしかった。「私は、見ているものは描かない。見えたものを描く」というムンクの言葉が紹介されていたが、その意味がわかる絵だった。「見ているもの」とは目の網膜に映ったもので、「見えたもの」とは心の目に映ったもののことだと思う。


2018年11月26日月曜日

ピサロの坂道の絵

Pissarro's  perspective

印象派のピサロの絵。雪道で二人の女性とすれ違うとき、男は車道へはみ出て道を譲っている。

ピサロは道の絵が多く、ほとんどが道を歩きながら見た風景を描いている。だから一点透視の構図が多いが、この場合は消失点に向かって一直線の道ではない。カーブしながら上り下りの起伏がある変化に富んだ道のようだ。遠近法的に面白ろそうなのでどんな道か調べてみた。

1 右手前の家から地平線( H.L.)の位置が推定できる。
2 道路は6つの面に分割でき、それぞれの消失点の位置を特定できる。
3 2番と3番の消失点( VP 2, VP 3 )は地平線上にあるので、ここは水平な道。
4 男が立っている一番手前の面は、消失点が地平線より下にあるので、やや下り坂。
5 4番目から上り坂がだんだんきつくなっていき、最後の6番目は急坂になる。


2018年11月24日土曜日

東山魁夷の「道」

Higashiyama Kaei

東山魁夷は終生市川市に在住していたので、現在その地に「市川市東山魁夷記念館」という美術館がある。以前同じ市内に住んでいたので、時々ここへ行った。今やっている東山魁夷展(国立進美術館)の看板作品が「道」だが、記念館ではその習作(左)があった。本作(右)と色が少し違うが、構図はほとんど同じ。


一直線の道だけを描いた単純この上ない絵。道は途中で切れていて、遠くまで見えていない。道を延長すると、消失点は彼方の山の稜線あたりになるので、これは上り坂なのだろう。一点透視の絵は消失点へ向かって見る人の視線を吸い寄せる求心力があるので、この道をどこまでも歩いて行きたくなる。そして習作と比べて気がついたが、本作の方は、道の先端が明るくなっていて、求心力をさらに強めている。

2018年11月22日木曜日

鎌倉建物散歩 明治の洋館(旧諸戸邸)

A retro residense in Kamakura

江ノ電の由比ヶ浜駅近くにあるこの洋風建築は明治時代に実業家の別邸だったもの。国の有形文化財になっているが、今は使われておらず無人になっている。小ぶりなのは、もともと両側にあった部分が取り壊されて、この中央部分だけが残っているからだという。正統的な古典主義の意匠で、バルコニーのコーナーが微妙なカーブでふくれているあたりなど、なかなかエレガント。

2018年11月20日火曜日

歪んだ写真 

Distortion of photo

幅1mくらいの大きい絵を画面いっぱいに撮ると直線が湾曲する。これでは使えない。

しかしこれは遠近法的な理屈には合っている。四角の周辺は若干だが中央より距離が遠いから長さが縮み、直線が湾曲する。

目では歪んで見えないのは、目の網膜が凹面状に湾曲しているためで、それに対してカメラは平面上に像を映すので周辺が歪む。写真で歪みを減らすには離れて望遠レンズで撮るか、画面中央に小さく撮り、後で周囲をトリミングするしかない。

絵画の遠近法もカメラと同じく平面に映った像を描く方式だから、遠近法が正しいほど周辺に歪みが出る。カメラ・オブスクラを使って写真と同じ正確さで描いたフェルメールなどもそうだ。

2018年11月18日日曜日

アイ・レベル(続き)

Eye lebel

レイモンド・リーチ「赤いドレスの少女」

たまたま見つけたこの絵だが遠近法的に面白い。5人の人がいて、立っていたり座っていたり、階段の上にいたり途中にいたり、とバラバラで、彼らを見上げたり見下ろしたりしている。だが一人だけそうでない人がいる。一番左の青シャツの男で、画家は彼だけを水平な視線で見ている。

遠近法の原理から、見ている人(画家)の目の高さ(アイ・レベル)は地平線上にあるわけだが、青シャツの男の顔も遠くの地平線と一致しているから、青シャツと画家は目線が同じ高さにいることになる。そしてこの画家は青シャツと同じく、階段の一番上に座って描いていることが分かる。