2025年7月26日土曜日

ビジネスの文化戦争 「イケア」「アップル」「スターバックス」

 Culture as Weapon

最近はやりの「文化戦争」(Cultural War)といえば、もっぱら政治分野の話しだ。アメリカの大統領選でトランプが叫んでいたのが、人工妊娠中絶反対だったし、日本の今度の選挙でも、選択的夫婦別姓制度や外国人排斥などの文化的問題が争点になっていた。

アメリカのネイトー・トンプソンというジャーナリストの「文化戦争 やわらかいプロパガンダがあなたを支配する」という本は、政治での文化戦争以外にもさまざまな分野での文化戦争の実態について書いていて面白い。

そのなかで取り上げているビジネス分野での文化戦争について紹介する。ビジネスの文化戦争とは「文化」を武器に使って自社のブランド価値を高める戦略だが、同書はその成功例として「イケア」「アップル」「スターバックス」の3社をあげている。この3社は日本でもビジネス展開をしているので、誰でも ”あるある” の体験があると思う。

例えば「イケア」について、『消費者の心に強い印象を残すのは、製品のイメージだけではないことを理解している。消費者との社会的な関係性が人々の心をとらえることを知っている』としている。

イケアの店舗を思い出すと確かにそうで、巨大な建物に入るとまず専門のスタッフがいる託児室がある。子供を預けて両親はゆっくりとショールームを見て歩くことができる。広大なショールームは一方通行になっていて、曲がりくねった通路の両側に、憧れを誘うようなモデルルームがあり購買意欲を誘う。単なる家具売り場ではない。数時間かけて一周するとインテリア雑貨のゾーンになる。さっきショールームに飾ってあった雑貨類を見て客は衝動買いをする。そこをすぎると、梱包のままの商品が天井まで積み上げられた倉庫ゾーンになる。今まで見てきた芝居の楽屋裏をのぞいている気分になる。それは外国から船で運ばれてきたばかりのコンテナーのようでイケアに対する信頼感を感じさせる。そして最後にスウェーデン料理のフードコートになり、ほぼ全員がそこで長い旅の疲れを癒す。

見終わるまでほぼ半日かかる店舗は、ちょっとしたテーマパークのようで、そこでは家具という「モノ価値」の提供よりも、そこでの客の「体験価値」を提供する。さらに家に帰って買った家具を自分の労力で組み立てるのが「体験価値」の総仕上げになる。自分のイケアとの一体感を感じさせることで、イケアのブランドブランド価値を高めている。


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