Eye-Level
カイユボットは印象派の巨匠だが、自然を描いた他の画家と違って、都会の風景を描いた。そして、風景を上から見下ろす構図が多いのだが、そこに風景を見ている人間を描き入れている。街を見ているのはカイユボット本人の視線なのだが、絵の中の人間に自分の身代わりをさせている。そして、街や建物と、見ている人間との関係を正確な遠近法で描いている。その点に注目して絵をチェックしてみる。
「地平線の高さは、その風景を見ている人の目の高さ(アイレベル)と一致する」というのが遠近法(透視図法)の基本中の基本原理だが、この絵はそれを忠実に描いている。地平線は直接見えてはいないが、その位置は向こうにあるビルから特定できる。建物の消失点を求め、それを通る水平線を引けば、そこが地平線の位置だが、手前にいる人間の目がピッタリその線上にある。
上の応用だが、下の絵で「外を眺めているこの人がいるのは何階か?」というクイズがあったとして、その答えは? 上の絵と同じ方法でチェックしてみれば、簡単に答えを割り出せる。正解は「3階」。
カイユボットの最も有名な作品のひとつで、男が鉄橋から線路を見下ろしている。空には機関車の煙が見えていて、遠くには別の鉄橋も見えていて、近代化したパリの風景を緻密に描写している。これも遠近法が極めて正確で、鉄橋などの消失点がピッタリと一点に集まっている。そして消失点を通る水平線を引けば、それが地平線になるが、その地平線の上にシルクハットの男の目の高さ(アイレベル)がピッタリと乗っている。右側の白い服の男の目は、前かがみになっている分、地平線より下の位置になっている。この絵でも「地平線の高さは、その風景を見ている人の目の高さ(アイレベル)と一致する」という原則が忠実に守られている。
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