2020年8月14日金曜日

アントニオ・ロペスの絵画

Antonio Ropez

スペインの超リアリズム画家アントニオ・ロペスの代表作のマドリードの街の絵は、早朝のようで、車も人もいない。正面遠くの建物に朝日が当たっている。街の風景をまるで写真のように描いている。しかしロペス自身は「自分の絵は写真と無縁だ」と言っていたそうだ。この絵もよく見ると、このとうりに一枚の写真で撮ることはできないはずだ。

 
画面がちょうど半分に分かれていて、上半分は建物で、下半分は道路、というのががユニークだ。画面を正方形にして、道路を大きく描いているのは、空間の奥行きを表すためだろう。そして道路のゼブラゾーンがうまい具合に3角形なので、遠近法的な奥行き感を強調する役目もしている。

これを描いているロペスを撮った写真がある、絵に描かれているゼブラゾーンの手前端は、ほぼロペスが立っている足元にあることがわかる。つまり建物を描くときは水平な視線で描いているが、道路を描くときは下を見ていることになる。

固定した一つの視点から、固定した一つの視軸で描くことが、遠近法の大原則だが、この絵では視軸の向きを変えた情景を組み合わせて一枚の絵にしている。本来の遠近法に違反しているが、これも「1視点・多視軸の遠近法」として広義の遠近法の一つとされることがある。

下の図で、左は建物を見ている水平な視軸で、右は道路を見ている時の下に向けた視軸。
(図は「空間を描く遠近法」より)

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