2020年8月2日日曜日

ワイエスのバケツの存在感

Vessel in Wyeth's painting

「Spring Fed」はワイエスの中でも好きな絵の一つだが、牛舎を描いている。ワイエスはいつも、必要なものを他所から持って来て必要な場所にはめ込むので、窓の外の牛がこんなに都合のいい位置にいたわけではないだろう。壁のバケツもおそらく同じに違いない。しかしこのバケツはとても存在感がある。

ワイエスの解説書「Andrew Wyeth  Memory & Magic」の中に、このバケツの拡大写真がフルページで載っていて、こう解説している。普通は、風景画に何か小さいものを描きこむ場合、点景として軽く描くだけだが、ワイエスは静物画のようにきっちり描く。風景画の中に静物画を取り入れているようなもので、このバケツがその典型だとしている。

このバケツの存在感は、質感もあるが、形の正確さによる。遠近法的に確かめてみた。回転体の回転軸と楕円の長軸は直交するという、円の遠近法の原則が完璧に守られている。

回転軸と楕円の長軸は直交するという、遠近法の教科書の説明図。上のバケツのように軸が斜めの場合、狂わないように描くのは特に難しい。

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