2020年7月9日木曜日

フェルメールの「信仰の寓意」で、なぜ地球儀を踏みつけているか?

Vermeer, Attribute and Globe

寓意画では、登場人物をシンボリックに表すアトリビュート(人物の属性を特定させるための持ち物)として小道具が描きこまれる。

フェルメールの「信仰の寓意」は信仰がテーマの寓意画で、十字架やキリストの磔の絵や、アダムとイブのリンゴと蛇、など信仰と関係の深い物が並べられている。しかし女性が右脚で踏みつけている地球儀はどういう意味なのか。(以下は「オランダ絵画のイコノロジー」による)

地球儀は、信仰の世界と対極の、財産、栄誉、悦楽などといった地上的な世俗世界の象徴だった。この「イエスの愛の輝き」という版画で、天秤の地球儀の乗った皿の方が、何も乗っていない皿より軽くなっている。天にある目に見えない信仰の世界の方が、地上の世俗世界より重いことを説いている。
「五人の愚かな乙女」という絵で、娘たちは、楽器の演奏、トランプ遊び、化粧、といった享楽的な世俗生活に身を委ねている。テーブルの上にある地球儀が、信仰のない生活のシンボルとして描かれている。

以上からフェルメールの地球儀の意味が分かる。地球儀という世俗世界を踏みつけて、信仰の世界に入ったことの寓意だ。
フェルメールには、背景の壁に世界地図が飾ってある絵がいくつかある。世界地図は地球儀を2次元の平面に展開したものだから、フェルメールは地球儀と同じ意味の世俗世界のシンボルとして使っている。この「兵士と笑う女」もそうで、ワインを飲みながら男と談笑している女性の享楽的な生活の寓意になっている。

なお、世界中で植民地を拡大していた当時のオランダでは、一般家庭で世界地図をよく飾っていたそうで、地図のある部屋が不自然なことではなかったことも背景にあるという。


0 件のコメント:

コメントを投稿