フェルメールの「恋文」は、奥さんが楽器を弾いている最中に、女中が持ってきた手紙を受け取っているシーンだが、手前のドアに箒が(見えずらいが)立てかけられている。他にも女中が使う家事道具が描かれているから、箒も単にその一つかと思っていたら大間違いだった。
フェルメール以外でも、1 7 世紀オランダの風俗画には頻繁に箒が登場する。以下はその例。
ウィッテという人の絵で、奥さんが楽器を弾いている。そして左端のソファに男が寝そべっている(暗くしてぼかしている)。フェルメールの「恋文」より、主人公の女性と男との関係が直接的に描かれている。そのシーで、奥の部屋で女中が箒で掃除をしている姿が見える。
どうも箒というのは、男女関係を描く時に使われる小道具らしい。以下は同様の例。
(右)テーブルの上に仕官の制服と剣が置かれていて、壁にはマントが掛かっている。人間は描いていないが、していることを暗示だけしている。それを箒を持った女中が覗き見している。
(右)男女入り乱れている「どんちやん騒ぎ」という絵で、やはり左下に箒が立てかけられている。
箒は魔女が空を飛ぶための道具とされていた。(映画などでも魔女は箒に乗ってくることになっている。)そして反対に、箒は部屋を掃除するだけでなく、魂も清めるという意味で、魔女を撃退するためにも箒がいいとされた。だから不倫や好色をいましめるという倫理的(または付け足し的?)な意味合いで、男女関係の絵には必ず箒が描かれたという。それにしても露骨な絵が多い中で、フェルメールの「恋文」は上品だ。(以上「オランダ絵画のイコノロジー」より)
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